柿崎普美
「魔性封殺@」(1989年7月30日第1刷発行)
「魔性封殺A」(1990年8月29日第1刷発行)

 収録作品

・「魔性封殺」
 己神勇姫(みかみ・ゆうき)は「翔の里」の一族の291代めの子孫。
 一千年前、彼女の先祖の神官は、神と名乗るものからお告げを受ける。
 神は彼女に、妖魔を封じる宝玉を渡し、石をはめる神像を作るよう命じる。
 そして、神獣と共に、各地の魔族を封印し、結界の中に神像を隠す。
 時は流れ、現代。
 宝玉はその力を失い、妖魔達が次々と復活していく。
 神獣、我王を身体に宿す勇姫は、「封殺の巫女」として神像の石を取り換えていかねばならないのだが…。
「第1章」
 勇姫は、ある高校へ転校する。
 古文書によると、このあたりに結界があるようだが、そこに高校が建って、はっきりとした場所がわからない。
 この町では、銀の犬による殺人事件が連続して起きていた。
 勇姫は、クラスで爪はじきにされている五月弥生に興味を持つ。
 彼女は過去に暴走族にレイプされ、家庭でも学校でも孤立していた。
 ただ一人、彼女を慰めてくれた姉は、銀の犬の最初に犠牲者となり、弥生は犬への復讐に燃える。
 勇姫と弥生は協力して、その犬を捜し出そうとするのだが…。
 「獣の脳をもつ一族」の親玉は誰…?
「第2章 妖樹」
 勇姫が訪れた町では、中高生や若い人々が何十人も行方不明になっていた。
 行方不明者の半分は私立緑星学園の生徒で、勇姫は早速、転校する。
 そこで、彼女は、日向一樹という男子生徒に言い寄られる。
 彼はスポーツ万能で、女子生徒の取り巻きも大勢。
 しかし、彼の取り巻きの女子生徒達は様子がどうもおかしい。
 顔色が悪く、貧血気味で、しかも、彼のことになると、見境がない。
 更に、勇姫も、何ものかに操られるかのように、彼に好意を抱いていく。
 一樹によると、学校の一部は「氏神の森」を切り開いたということなのだが…。
 この森に潜むものとは…?
「第3章 夢魔」
 次に、勇姫と我王が訪れたのは、お化け騒ぎが頻発している病院。
 その騒ぎは、「眠り病」の患者が運び込まれた半年前から起り始めたらしい。
 「眠り病」はティーンネイジャーがかかり、昏々と眠り続け、突然、衰弱死するという謎の奇病であった。
 勇姫は、お化けの正体が「眠り病」患者の見ている夢であることを見抜く。
 夢の化け物は強いものが弱いものを食べ、食べた方はどんどん成長し、食べられた方の患者は衰弱死してしまうのであった。
 そして、その原因となる妖魔は、集中治療室で治療を受けている、院長の息子、達郎らしい。
 その彼のもとに、毎日、恋人の紀子が通っていたが、彼女は華月(第1章の登場人物)にそっくりであった。
 夢魔の正体は…?
「第4章 傀儡」
 祖母の病気を見舞うため、勇姫は己神本家別邸を訪れる。
 予想以上に祖母の病気は重いのに、邸の人々は皆、冷たく、よそよそしい。
 しかも、父親は勇姫に魔封じをやめて、いとこの光と結婚するよう言ってくる。
 いとこの光は過去、彼女をバカにして以来、己神家を出入り禁止となっていた。
 だが、火事で全身やけどを負ったことをきっかけに、巫女の力を得て、今や己神グループにとって彼の神託はなくてはならないものであった。
 勇姫は彼を拒否するものの、彼は彼女の力を凌駕する。
 我王は祖母につきっきりで、邸で勇姫は孤立を深め、徐々に追い詰められる。
 その心の隙間をつくように、光は彼女に言い寄ってくるのだが…。
 光の思惑とは…?
「第5章 樹怪」
 我王と何らかの因縁のあるフローリアを追い、勇姫と我王は青木ヶ原樹海のバンガロー村にやって来る。
 ここでは若い人達が次々と行方不明になっており、また、客の様子もおかしい。
 我王は森全体がフローリアに支配されていることを知り、バンガローで作戦を練ることにする。
 だが、先に、魔樹に寄生された人々が勇姫達に襲いかかる。
 秘石のパワーでその場はしのげたものの、魔樹によって二人は地下に引きずり込まれ、離れ離れとなってしまう。
 そこで、勇姫はフローリアの秘密を知るのだが…。
 最後の戦いの行方や如何に…?

・「バースナイト 誕生の夜」(同人誌「華激団」収録)
「(「ブラッディ・マリィ」の後日譚)
 大地の女神が復活し、あらゆるものに力が宿った世界。
 グリード=ロームは、黒魔術を使うドラゴン・ハンターであった。
 ある村で、彼は、銀髪の竪琴弾きと出会う。
 彼は、母親から「太陽を追ううち」捜す相手と巡り合うと言われ、旅をしていた。
 ロームは彼と一緒に行くことになるが、山賊と戦った後、沼魔の沼へと迷いこむ。
 そこで、ロームは彼の秘密を知るのだが…」

 「魔性封殺」第1・2章、「バースナイト 誕生の夜」は「魔性封殺@」に、「魔性封殺」第3〜5章は「魔性封殺A」に収録。
 「魔性封殺」は妖怪退治の話かと思いきや、後半、SFになるという変わり種です。
 柿崎普美先生の作品に共通することですが、この作品も「詰め込み過ぎ」で、一読しただけでは、わかりにくいところがあります。
 ただし、あの時代に、ここまで凝ったストーリーというのは、もっと評価されるべきではないでしょうか?

2021年4月8・9日 ページ作成・執筆

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