美内すずえ「魔女メディア」(1977年12月20日第1刷発行)
「母親が死んだ六歳の頃から、リリーは悪夢をしばしば見るようになる。
霧の中、巨大な塔がそびえ立っており、彼女は不安感に苛まされながらも、目の前のフード付のコートを着人物の後をついて、塔を登っていく。
塔の頂上には黒い十字架のついた鉄の扉があり、その扉の向こうを目にする度に、恐怖で目が覚めるのであった。
時は流れ、リリーが17歳になった時、父親はすでに亡くなり、彼女は伯父一家の世話になる。
とは言え、彼女は伯父の家族に爪はじきにされ、いつも一人ぼっちであった。
夏休み、リリーと伯父一家はローゼンハイツの古城を訪れる。
その古城をホテルに開発する計画があり、伯父は改造工事の指揮やホテル管理の仕事のためであった。
そこで、リリーは幾度となく夢で見た塔を目にする。
しかし、その塔の頂上の扉は固く閉ざされ、扉の下部に鍵のかかった、小さな戸口しかない。
また、城の工事の最中、あちこちから死体や白骨やらがぞろぞろ出てきて大騒ぎとなる。
実は、この城は魔女と言われたメディア・レノア・パトリーの城であった。
三百年も前、彼女は悪魔の力を手に入れて、邪魔者を片端から殺害し、莫大な富を手に入れただけでなく、魔力を強めるため、多くの若い娘を生贄に捧げる。
だが、魔女裁判で有罪となり、塔の頂上の部屋に幽閉され、七年後に死んだと伝えられていた。
ある日、リリーは、冤罪から、その部屋で一夜を過ごすこととなる。
以来、内気だったリリーの様子は変わっていき、奇怪な出来事が頻発する。
列車でリリーと知り合ったライアン・クローリーは、リリーの態度の不審を抱き、独自にメディア・レノア・パトリーについて調査する。
そこで明らかになったのは、リリーがパトリー家の末裔であることであった…」
(1975年「別冊マーガレット」9月号・10月号掲載)
恐らく、「血の伯爵夫人」エリザベート・バートリからインスパイアされた名作です。
美内すずえ・印の怪奇漫画ですから、駄作では決してないものの、個人的には、パンチが弱いように思いました。
少女漫画雑誌に掲載された故か、憎い奴らや邪魔の奴らを皆殺しにしていくという展開には行かず、極悪非道な魔女に憑依されてる割には、やり方が手ぬるい印象です。
もっと派手に、ガンガンぶち殺しちゃえばいいのに!!と思わずにいられません!!(が、こういうことを求めること自体、間違ってますよね。すんません…。)(注1)
とは言え、魔女に憑依されたヒロインの心理描写はさすがは美内先生!! じっとりと不気味です。
・注1
こう考えると、菊川近子先生「赤い爪あと」が如何にエポック・メイキングな作品だったのかがわかります。
怪奇マンガでもありそうで実は少ない「殺る気まんまん」な傑作です。
2019年4月3・4日 ページ作成・執筆