森野達弥「もがりの首」(2014年4月23日第1刷発行)

・「うらみの花/もがりの首1571年」(「トラマガ」2002年8月第1号(英知出版))
「織田軍の雑兵、名柄佐平は、命危ういところを、敵方の女性に匿われる。
 女性は佐平を救うために、彼を剃髪し、僧として比叡山に送り出す。
 だが、佐平は寝返って、織田軍に比叡山の情報をもたらす。
 比叡山の焼き討ちの際、佐平は、身を隠していた、命の恩人の女性とその子供を発見するが、容赦なく殺害。
 数か月後、戦功により屋敷を与えられた佐平は、織田信長とお目通りが叶うこととなる。
 しかし、彼がわらじを履いて、行こうとすると、そのわらじが地面に貼りついて…」

・「流行の壷/もがりの首1598年」(「トラマガ」2003年1月vol.3(インフォレスト))
「朝鮮出兵の後、日本で起こった陶磁器ブーム。
 明の器が流行り、陶工が皆、ブームに倣う中、茂平という陶工は今までの素朴な作風を変えることができなかった。
 だが、ふとしたことから、茂平の器が、秀吉の目に留まり、茶器を献上せよとの命令が下る。
 役人の撫方(うぶかた)勘兵衛がその任に当たるが、彼には茶器の知識がなく、茂平に無理矢理、流行の意匠の茶器をつくらせる。
 しかし、その茶器で、秀吉は茶会で大恥をかき、撫方勘兵衛はその責任を器問屋の筑前屋利兵衛に転嫁。
 更に、口封じのために、茂平と筑前屋利兵衛を斬殺する。
 結局、二人の死は自害とされ、茂平の窯は閉鎖される。
 その夜、撫方勘兵衛のもとに、褒美として「虎の手を入れた」壷が届けられるのだが…」

・「衣/もがりの首1620年」(「コミック特盛 新耳袋 あなたの隣の怖い話」2013年冬号)
「ある武家の側室が三十を過ぎて、御床払いになり、東の国の屋敷に都から移る。
 側室と二人の侍女は、その地方の娘、お市を下女として雇い、日々、散々いじめて、鬱憤晴らしをする。
 いくらいじめられても、お市は、両親の借金のために、辞めるわけにはいかない。
 ある日、彼女は、恋人の新八に、屋敷の門番に雇ってもらうよう頼まれる。
 彼は侍に憧れており、「もがり」と共に、門番となるが、ひそかに側室達の陰謀が進行していた…」

・「足跡/もがりの首1861年」(「コミック特盛 新耳袋 あなたの隣の怖い話」2014年春号)
「幕末。
 ある峠で、行き倒れの「もがり」を助けた武士、田島。
 彼は部下の菊川一之丞に妻の弥栄をたぶらかされ、出奔した二人を追って、旅をしていた。
 ある旅館で、彼は一之丞と弥栄を見つけ、一之丞を斬殺、弥栄は自害する。
 しかし、実際は田島は単なるパラノイアで、一之丞の妻、弥栄を自分の妻と思い込んでいたのであった。
 田島は有力者との親戚で、困った代官所の役人は、田島に罪の身代わりになる人物の心当たりを尋ねる。
 田島の答えは「もがり」であった。
 自由の身になった田島であったが、牢にいるはずの「もがり」を目にし、砂丘に残った、彼の足跡を追って行くだが…」

・「善意/もがりの首1898年」(「コミック特盛 新耳袋 あなたの隣の怖い話」2014年夏号)
「明治期。東京。
 山川という青年が結婚した恵美子の父親は、自称・小説家であった。
 恵美子の母親は、夫の才能を信じ、創作のための環境づくりを最優先としたが、無理がたたって亡くなる。
 また、恵美子も収入を全て父親のもとに入れていたが、父親の新作はいつまで経っても完成しない。
 山川は、両親を早くに亡くし、家庭というものに飢えていたので、義父を全力で支えることを約束し、実行する。
 しかも、恵美子が病死してからも、彼は義父に甲斐甲斐しく尽くすことを止めなかった。
 ある日、義父は、自分が立ち退きせねばならないことを知る。
 そこで、山川に生命保険をかけ、彼を豆腐料理で毒殺するのだが…」

・「羨望/もがりの首1974年」(「コミック特盛 新耳袋 あなたの隣の怖い話」2014年冬号)
「昭和四十年代の横浜、本牧。
 団地住まいの少年、タクヤは在日米軍用地で、不思議な少年「もがり」と出会う。
 「もがり」は燃料用の古紙を集めていたが、その中にアメコミの本をタクヤはもらって大喜び。
 以来、彼は「もがり」とボイラー室で一緒に過ごすようになる。
 しかし、クラスのガキ大将にアメコミを見つかり、彼は「もがり」のもとに案内されるよう強制される。
 ガキ大将は「もがり」からアメコミを奪い取るが、ふとしたことからアメコミは全て、水路に流されてしまう。
 その夜、様々なコレクションに埋まる、ガキ大将の部屋を訪れた「もの」とは…?」

2019年9月16日 ページ作成・執筆

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