里見有・作画/外薗昌也・原作
「蟲姫@」(2015年6月24日第1刷・2016年10月17日第2刷発行)
「蟲姫A」(2015年7月22日第1刷・2016年10月17日第2刷発行)
「蟲姫B」(2015年8月24日第1刷・2016年10月17日第2刷発行)


単行本@(「画楽ノ社」(ホーム社)2013年5月更新〜11月更新)
・「第一羽」
 高校生の高砂陵一は十日も続けて悪夢に悩まされていた。
 夢の中で、彼は船頭の操る小舟に乗り、水面を覗き込んでいる。
 水面には夥しい数の死体が浮いているが、全裸で長い黒髪の娘が目に入る。
 娘は目を開き、彼に微笑みかけると、化物と化し、彼に襲いかかってくるのであった。
 そして、その夢の娘が彼の高校に転校してくる…。
・「第二羽」
 彼女の名は宗方聴久子で、陵一のクラスであった。
 クラス中、彼女の美しさに沸き立つが、陵一は恐怖しか感じない。
 そして、彼女の方も陵一に他の男とは違う「匂い」を感じる…。
・「第三羽」
 陵一はまた悪夢を見る。
 それは今までのものとは違い、夢の中はどこかのカラオケボックス。
 そこで聴久子が見知らぬ中年男性とカラオケボックスでデートしている。
 彼女は男に急にキスをすると、男はもがき苦しむ。
 男が動かなくなり、彼女が口を話すと、彼女の口からは細い触手のようなものが覗いていた。
 そんな夢を見たせいで、彼は聴久子に対してますます恐怖を募らせるが、学校での彼女は実に普通の女の子。
 彼は彼女を普通の人間と思い込もうとするが、放課後の帰り道、夢で見た中年男性を見かける。
 中年男性の様子は明らかにおかしかった…。
・「第四羽」
 中年男性は聴久子にブロックで襲いかかる。
 聴久子の左腕からは針が突き出し、それで男の脳天を刺し、殺害。
 頭部に傷を負い、意識を失った彼女を陵一は自分の部屋に運び込む。
 目覚めた彼女は彼の胸倉を掴み、あるものをねだるのだが…。
・「第五羽」
 中年男性の遺体は司法解剖に回される。
 死ぬ直前の目撃情報から薬物が疑われるが、薬物反応はない。
 ただ、遺体には死後硬直が早い等、おかしな点がある。
 また、喉の奥から細い管のようなものが発見される…。
・「第六羽」
 その管の中には脳内麻薬のエンドルフィンが満ちていた。
 どうやら被害者はエンドルフィンを過剰に分泌させられ、何ものかに吸い取られ、抵抗した際に噛みちぎったのがあの管らしい。
 杏琳大の法医学研究所の菅原は思い当たることがあり、科学警察研究所の久住昭彦に慌てて電話する。
 死体の状況は久住が以前、話していたと全く一緒であった…。
・「第七羽」
 陵一の友人達は彼の見舞いに行く。
 彼はすっかりやつれていたが、妙に色めかしい。
 また、彼と同じように、聴久子も担任も休んでいた。
 彼に想いを寄せる知見は聴久子が現れてから、彼の様子がおかしくなったことに胸騒ぎを覚える。
 一方、刑事達は中年男性の殺人事件についての聞き込みを続けていた。
 彼らは中年男性が女の子をいつも引っ張り込んでいたカラオケボックスに行くも、防犯カメラのデータは保健所の人間が持って行ったと言われる。
 だが、それは保健所ではなく、科学警察研究所の久住の仕業であった。
 久住は帝医大を首席で卒業して、厚労省の研究所にいたという天才だが、何故か科学警察研究所に籍を置く。
 彼は去年からの「動機も原因も不明の死亡事件や事故・自殺」を関連付け、それらが関西から関東にかけて起こっているとの説を立てる。
 そして、今、その事件が東京でも起こったのであった。
 カラオケボックスの防犯データに映っていたのは…?

単行本A(「画楽ノ社」(ホーム社)2013年12月更新〜2014年4月、6月〜8月更新)
・「第八羽」
 陵一の寝室に聴久子が忍び込む。
 彼女は陵一の口に管の束を差し込むが、そこを陵一の母に目撃されてしまう。
 陵一の母は部屋から逃げ出すも、階段で足を滑らし…。
・「第九羽」
 目覚めた陵一は部屋を出る。
 階段の下で母親の刺殺体を見つけ、ショックで頭を抱えるが、台所には食事が用意してあった。
 彼はこれは夢だと考えるのだが、そこに現れたのは…?
・「第十羽」
 陵一は聴久子に拘束される。
 彼女は彼に愛の告白をし、これからもっと理解し合えると話す。
 そこに彼を心配した友人達が訪問してくる。
 知見を守るため、彼は彼らを邪険に追い返すのだが…」
・「第十一羽」
 陵一の友人達は気晴らしにゲームセンターに寄る。
 だが、知見は陵一のことが気になって仕方がなく、彼ともう一度会おうとする。
 彼の家に向かう途中、彼女は見知らぬ男性に声をかけられる。
 その男は久住で、カラオケボックスの写真を手に、生徒達に聞き込みを行っていた。
 その写真を見て、知見はそれが聴久子と気づく。
 また、久住は知見の服に血がついているのを見つけ、陵一の家に聴久子がいると確信する…。
・「第十二羽」
 急に降り出した雨。
 その雨は聴久子にある記憶をフラッシュバックさせる。
 彼女は無数の虫を呼び出し、陵一は彼女から逃げようとする。
 どうにか飛び込んだ浴室で彼が見たものは…?
 一方、久住と知見は陵一の家に車で到着する。
 久住は猟銃で武装し、家の中に入って行く…。
・「第十三羽」
 久住は聴久子に猟銃を二発撃ちこみ、陵一を救出する。
 駆けつけた警官により、久住は逮捕。
 だが、浴室に蝶久子の死体はなかった…。
・「第十四羽」
 菅原が久住の身元引受人となり、久住は釈放される。
 彼らが陵一が入院している医大病院に向かうと、二人の刑事と知見もその場にいた。
 更に、陵一の父親がヨーロッパから病院に駆けつける。
 久住は彼らに何が起きているのか話す。
 宗方聴久子は久住の友人の娘で、その友人は陵一の父とは一卵性双生児の兄弟であった。
 すなわち、陵一と聴久子は異母兄弟なのだが…。
・「第十五羽」
 聴久子の父親が進めていた研究。
 それは「バイオスフィア2」と呼ばれるプロジェクトで、森林地帯の真ん中にガラス張りの巨大ドームを建設する。
 そして、ドームの中の森をあらゆる有害物質や放射能で傷つけ、その生態系の回復を調査したのであった。
 いくらダメージを与えても、森は絶え続けるも、ある日を境に急速に枯れ始める。
 原因は、虫がいなくなったことであった。
 彼らが虫の行方を探すと、意外な事実が判明する。
 聴久子の父親はそれを知り、ある実験を行う。
 娘を救うために…。

単行本B(「画楽ノ社」(ホーム社)2014年9月、11月更新〜2015年1月、3月〜6月更新、第24羽は本書が初出)
・「第十六羽」
 三鷹市が虫の大群に埋め尽くされる。
 これは聴久子による陽動作戦で、警察も消防もそちらに回り、医大病院にいる陵一は孤立する。
 聴久子の真の目的とは…?
・「第十七羽」
 陵一を守れるのは、久住、菅原、知見、陵一の父親の四人のみ。
 久住は陵一を地下の霊安室に運び入れ、そこに彼らは立てこもる。
 久住は聴久子に対抗する案があるようなのだが…。
 一方、聴久子は患者のふりをして、病院に入り込んでいた…。
・「第十八羽」
 久住の最初の案はあまりに危険なため、却下され、次の案で行くことになる。
 この案では陵一の父親が聴久子の父親と双子であることを利用する。
 聴久子は父親が双子であることを知っておらず…。
・「第十九羽」
 作戦は成功し、聴久子は身動きできなくなる。
 彼女を前にして、陵一の父親は生き別れの兄について久住に尋ねる。
 聴久子の父親の身に起こったこととは…?
・「第二十羽」
 ゲリラ豪雨により病院が浸水し、聴久子が復活する。
 彼女は久住たちの前で変身するが、それは「進化の姿」であった。
 一方、霊安室にも水が流れ込み、菅原と知見は陵一を連れて脱出しようとするが…。
・「第ニ十一羽」
 陵一のもとに聴久子が現れ、知見を襲う。
 聴久子は陵一のエンドルフィンを吸い、それを知見に見せつける。
 それには遂に知見も怒りを爆発させ、女の意地を見せつけるのだが…。
・「第ニ十二羽」
 快楽の渦中にいながらも、陵一は知見が命の危険にさらされているのを目にする。
 彼がとった行動とは…?
 一方、九死に一生を得た久住は自分の開発した酵素を胸に霊安室に急ぐ…。
・「第ニ十三羽」
 陵一の拒絶。
 聴久子は霊安室に虫の大群を呼び、皆殺しにしようとする。
 絶体絶命のその時…。
・「第ニ十四羽」
 事件から二か月。
 人々は平穏を取り戻したかに見えた。
 しかし、久住は知っている。
 「旧い種」は滅びるしかないことを…。

 外薗昌也先生とイラストレーターの里見有先生がタッグを組んだ力作です。
 里見有先生は漫画連作は本作が初めてとのことですが、そうとは思えないクオリティです。
 また、女性だけあって、女性キャラが艶っぽく、繊細なタッチがグロい内容を程よく緩和して、読みやすくしております。(でも、グロ描写は本気出してますので、落差にのけぞるかも…。)
 あと、「昆虫もの」の元祖&大傑作の「ミクロイドS」風な蟲の大襲撃シーンがきっちり盛り込んであって、嬉しかったです。
 にしても、聴久子の腕から突き出るトゲはありゃ一体何だったのでしょうか?

2023年9月14・15・19日 ページ作成・執筆

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