星野之宣「イワン・デジャビュの一日」(1988年11月15日第1刷・1989年11月15日第2刷発行)

 収録作品

・「落雷」(「四次元の爆撃機」改題/1975年「月刊少年ジャンプ」8月号)
「羽田から広島に向かう、小さなセスナ機。
 乗客は広島の実家に帰省する青年、広島に社用のある中年サラリーマン、謎めいた美女、外国人の神父の四人。(加えて、パイロットが一人。)
 広島上空は悪天候で、雷が多発しており、セスナ機に落雷する。
 乗客たちが気が付くと、飛行機は飛んでいることは飛んでいたが、計器はむちゃくちゃで、操縦桿は言うことを聞かない。
 ここはどうやら四次元空間らしい。
 向こうから軍用機が飛んできて、セスナ機は危ない所でよけるが、その軍用機を見て、外国人神父は顔色を変える。
 それは太平洋戦争中に消息を絶ったB29号機「サンダーボルト号」で、原子爆弾を搭載していた…」

・「海の牙」(1979年「少年ジャンプ」1月25日増刊)
「原子力潜水艦アクエリアス号が南太平洋で遭難する。
 イエルマーク艦長は予備潜水艦ユーラクロン号に乗り、現場に急行。
 アクエリアス号には彼の息子、ボビーが乗っていた。
 沈没地点に到達するも、魚の姿が見えず、海底にはおびただしい数の魚や鮫の死体が横たわっていた。
 ようやく海底にアクエリアス号を発見するも、艦はひどく損傷していた。
 生存者を確認し、救助活動に取り掛かろうとした矢先、海上の救難艦から救助活動を一時停止して、すぐに浮上するよう命令が下る。
 救難艦の提督はアクエリアス号を調べるために潜水球を海底に降ろすが、何ものかによって破壊されていた。
 この海域には正体不明の危険が潜んでいるが、アクエリアス号の乗員の救助は一刻も争う。
 イエルマークは、車椅子の科学者、ロゴスと共に再度ユーラクロン号で潜水する。
 アクエリアス号を襲ったものの正体は…?」

・「暁の狩人」(1976年「少年ジャンプ」28号)
「約二十年前のヨーロッパ平原。
 人類の祖先と言われるネアンデルタール人と共に、もう一つの人類が存在した。
 それはサッコバストーレ人といい、先行現生人類で、現代人と似た頭蓋骨格を持つ。
 氷と野獣に支配された世界で、彼らはネアンデルタール人からの襲撃に頭を悩ましていた。
 いくら戦っても、ネアンデルタール人たちは日ごと、その数を増やし、その脅威は高まるばかり。
 一族のおかしらは、長い冬が続く限り、皆、飢えていくばかりであると考え、洞窟を捨て、暖かい土地への移住を決断する。
 日の没する方角に暖かく、獣と水の豊かな土地があると昔の言い伝えにあり、彼らは西を目指す。
 過酷な旅になるが、おかしらは足手まといになる女・子供を大切にするよう男どもを諭す。
 だが、ある日、アトルはおかしらの秘密に気づく。
 彼らは新天地にたどり着けるのであろうか…?」

・「アリス」(1985年「コミックトム」8月〜10月号)
「平凡なOL、アリス・セントクレア。
 ある夜、友人のヘレンと一緒に遊園地に立ち寄った際、アリスはメリーゴーラウンドの前で倒れる。
 病院に搬送され、若い医師は軽い脳震盪だろうと考えるが、頭部のCTスキャン画像を見て、顔色を変える。
 彼は脳神経外科のドクター・ハンプティを呼ぶが、アリスは病院から抜け出す。
 ヘレンはアリスをアパートに送るも、アリスはクロフトにある自分の家に帰ると言ってきかない。
 クロフトはその場所から200マイルも離れており、ヘレンは仕方なしに彼女を送ることになる。
 一方、アリスの意識は奇妙な世界にいた。
 彼女はチラノ・ド・ベルジュラック・レックス公爵と共にトランプの女王の城に行くのだが…。
 クロフトには何があるのであろうか…?
 そして、アリスの身に起こったこととは…?」

・「イワン・デジャビュの一日」(1986年「ビジネスジャンプ」3月号)
「イワン・デジャビュはコーレンカという少年の父親。
 至って普通の中年の男で、今日も彼は仕事に向かう。
 仕事着に着替え、トロッコで入坑した先は、ドイツ軍との戦場であった。
 彼は今日一日を生き延びることができるのであろうか…?」

 星野之宣先生は「SF」漫画家に分類されるでしょうが、「あとがき」にも書かれてあるように、「SF」をルーツに持ちながらも、様々なジャンルに挑戦し続けてきました。
 この単行本はその中でも怪奇・幻想的な作風のものが収録されて(いるように感じ)ます。
 どの作品も完成度は高いですが、白眉は名作「海の牙」と「アリス」。
 「アリス」は二重人格と「不思議の国のアリス」を絡め合わせたメディカル(?)・ミステリーで、巧みな構成とちょっぴり物悲しい結末に感銘を受けました。

2024年1月11・22日 ページ作成・執筆

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