山岸凉子「パイド・パイパー」(1992年2月26日第1刷発行)

 収録作品

・「パイド・パイパー」(1990年「YOU ALL」Vol.3 掲載)
「夫の転勤に合わせ、有沢一家(夫と妻、道子、子供は年(とおる)と千歳)はT県M市に引っ越す。
 実は、M市は、道子が子供の頃、妹の藤子が幼女連続殺人犯の犠牲になったという因縁がある土地であった。
 しかし、道子は夫を不倫相手から引き離し、もう一度、やり直す機会と考える。
 ところが、M市とその周辺では、幼女の誘拐殺人事件が連続して発生する。
 更に、土地を移っても、夫の浮気はやむことはなく、彼女の心は打ちひしがれる。
 そんな時、娘の千歳が失踪。
 道子は、娘を救うため、奔走するうちに、過去の事件と対峙することとなる…」

・「蜃気楼」(1990年「YOU ALL」Vol.1 掲載)
「弱小出版社の編集部を一人で切り盛りしている弓浦昌彦。(1990年「YOU ALL」Vol.3 掲載)
 彼は、貞淑な妻、春枝と、幼い娘、ひろみという家庭がありながら、仕事場の星子と不倫を続けていた。
 彼にとっては、家庭的な妻と、我儘な星子の二人を愛することは、罪悪感を感じつつも、必要なことであった。
 そして、彼は、二人とも幸せにしているという自信があった。
 だが、彼の家のある地区で、度々放火事件が起きる。
 この関係を維持するために、彼はその場しのぎの嘘で糊塗していくが、徐々に綻びが生じていく。
 身勝手な男の願望の行く末は…?」

・「負の暗示」(1991年「YOU ALL」Vol.9 掲載)
 犯罪史上に残る「津山三十人殺し」を描いた傑作。
 犯人の「都井 睦雄」が山岸凉子風美青年になっているが、そこはご愛敬。
 その他にも、史実とは違う部分があるかもしれないが、そんなことはどーでもいい!!
 「天人唐草」等、「負のサイクル」を描かせたら、右に出るものはいない山岸先生の筆にかかったら、もう説得力が違う!!
 高過ぎるプライド故に追い込まれていった果ての大量虐殺の描写は、ひたすらに凄惨で生々しい。
 その凄まじさには、凡百のスプラッター映画が束になってかかっても、決してかなわないだろう。

2021年1月2・4日 ページ作成・執筆

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