池田理代子「ベルサイユのばらI」(1974年5月20日第1刷・1979年5月15日第21刷発行)

・「ベルサイユのばら外伝/黒衣の伯爵夫人の巻」(「週刊マーガレット」1974年4・5号〜6・7号)
「オスカル、アンドレ、ロザリーの三人はオスカルの姉(オルタンス・ド・ラ・ローランシー)の嫁ぎ先の館を訪ねる。
 オルタンスにはルー・ルーという六歳の娘がおり、元気でおしゃまな少女であった。
 翌日、舞踏会が開かれ、オルタンスはオスカルを来客に紹介する。
 舞踏会にはオルタンスの主人の遠縁であるルフェビュール候夫人も来ており、その娘のカロリーヌはオスカルに魅了され、オスカルのそばにいたロザリーに嫉妬の炎を燃やす。
 舞踏会もたけなわの頃、急な雷雨と共に、モンテクレール伯爵夫人の馬車が到着する。
 モンテクレール伯爵夫人(エリザベート・ド・モンテクレール)は黒衣に身を包んだ夫人で、その美しさの裏に凄まじい毒気を秘めていた。
 彼女はオスカルとロザリーに妙な執着を見せ、特に、カロリーヌにいじめられるロザリーには優しく接する。
 翌日、オスカル、アンドレ、ルー・ルー、ロザリー、カロリーヌの五人でピクニックに出かける。
 ところが、帰る途中で道に迷い、彼らはモンテクレール城で一夜の宿を乞う。
 伯爵夫人はオスカルたちを歓待してくれるが、食事の場に夫人の恋人と噂される青年はいなかった。
 夫人によると、その青年はリオネルという名の甥で、体が不自由だという。
 その夜、カロリーヌはリオネルを誘惑しようとして、彼に会うのだが…。
 一方、オスカルたちは彼女を捜すうちに、夫人の手下に捕らえられてしまう。
 この城は「吸血鬼」の根城なのであろうか…?
 そして、モンテクレール伯爵夫人の目的は…?」

・「白いエグモント」(「週刊マーガレット」1973年お正月の増刊号)
「高山みち子は超のつくドジっ娘。
 おまけに不器用で、精一杯頑張ってはいるものの、しばしば自己嫌悪に陥る。
 そんな彼女が想いを寄せるのは志村という男子生徒。
 彼は病気で療養していたため、彼女より二歳年上であった。
 彼は彼女に関心があるようだが、彼と話すたびに彼女は自分がからかわれているように感じ、ますます臆病になってしまう。
 しかし、ある時、彼女は彼がベートーベンのエグモント序曲が好きなことを知る。
 また、彼の定期券を拾うが、その中に彼の恋人らしいショートカットの少女の写真が入っていた。
 クリスマスの日、彼女は髪を写真の少女のように短くして、彼にエグモント序曲のレコードをプレゼントとして渡そうと考えるのだが…」

 こんなサイトで名作中の名作「ベルサイユのばら」を扱っていいのか迷ったものの、池田理代子先生はホラーと相性がよいとの持論に従って、紹介しちゃいます。(注1)
 実は、外伝の「黒衣の伯爵夫人の巻」は血の伯爵夫人・エリザベート・バートリーをモデルにしており、直接的な描写は少ないものの、かなりサディスティックな内容です。
 更に、「鉄の処女」からインスピレーションを受けたと思しき殺人人形まで登場!!(最初、読んだ時、感動しました。)
 当時、大人気の「ベルサイユのばら」にまさかこれほどの怪奇色をぶち込むなんて読者の少女たちは誰も想像しなかったはずで、彼女たちにかなりのトラウマを植え付けたのではないでしょうか?
 私の知る限り、あの時代にこんな血生臭い作品を少女漫画雑誌に掲載したのは池田理代子先生と高階良子先生、それと、わたなべまさこ先生しかおりません。(注2)
 やっぱり、池田理代子先生は偉大だな!!

・注1
 「ベルサイユのばら」はホラーの要素は皆無に近いですが、連載終了から約四十年後に描かれた「外伝」にはファンタジー寄りの作品があります。
 「エピソード7」(「ベルサイユのばら」L巻収録)はオスカルがドッペルゲンガーに会う話ですし、物語を締めくくるにふさわしい力作「エピソード9」ではまさかの「ポ※※※※」(ネタばれ防止のため伏字)が出てきて、のけぞりました。
 んで、ラストでは、やっぱり、フェルゼン伯はリンチにあって殺されてます…。

・注2
 楳図かずお先生の「洗礼」もありますが、あれはまたちょっと違う気がしております。

2025年6月28・30日 ページ作成・執筆

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