和田慎二「銀色の髪の亜里沙」(1977年3月31日第1刷・1981年6月15日第12刷発行)

 収録作品

・「銀色の髪の亜里沙」(1973年「別冊マーガレット」)
「本条亜里沙は大企業の社長の娘。
 昭和44年に13歳の誕生日を四人の親友に囲まれ、幸せの絶頂にいた。
 だが、その日、父親が交通事故死する。
 二週間後、落ち込む亜里沙を親友たち(信楽紅子・青木恵子・川崎マサコ)がハイキングに誘う。
 実はそれは罠で、紅子たちは実は亜里沙を憎んでおり、吐竜窟へと彼女を突き落とす。
 更に、紅子は亜里沙の父親の事故は彼女の父親が仕組んだことを亜里沙に明かす。
 その魔手は母親にも伸び、会社の実権は紅子の父親に奪われる。
 吐竜窟に落ちた亜里沙は学者の老夫婦に命を助けられる。
 この地下は飛鳥朝時代の墓で、迷路のように入り組んでおり、遺跡を研究していた老夫婦は12年もの間、閉じ込められていた。
 明かりはヒカリゴケのみだが、水も食料も十分にあり、生きることに不自由はない。
 老夫婦は亜里沙に様々な教育を施し、また、地下洞窟の環境は彼女の身体をしなやかで頑健に変える。
 このようにして、亜里沙は、紅子たちへの復讐心を心の支えにして、数年もの地下生活を送るが、遂に老夫婦が相次いで亡くなる。
 老人の遺言から、彼女は外界への抜け穴を発見し、命からがら地上へ生還する。
 しかし、長年の地下生活のため、彼女の髪は銀色になり、肌は透けるように白くなっていた。
 数か月後、名門・青陵学園にアメリカからの帰国子女が転入してくる。
 その名は飛鷹アリサで、地下のヒスイにより巨万の富を築いた本条亜里沙の変名であった。
 彼女は、自分を殺そうとした恵子・マサコ・紅子を次々と破滅へと追い込んでいく…」

・「お嬢さん社長奮戦中!!」
「16歳の浅野ユミは父親の遺言により浅野繊維株式会社の社長に就任する。
 だが、浅野繊維はライバルの信楽繊維に七千万円もの借金があった。
 お目付けの沖田総二による経営の特訓を受けた後、ユミの社長としての最初の仕事は利子の二千万円を都合すること。
 世間知らずのお嬢様ゆえに世間の目は厳しく、彼女は自分自身の「信用」を築く必要に気づく。
 彼女の熱意、そして、社員たちのバックアップ…浅野繊維は会社の危機を乗り越えることができるのだろうか…?」

・「冬の祭」
「家四十軒、人口百五十人足らずの農村。
 あと一週間で冬の祭が始まる。
 この祭は村が一年平和だったことを天の神様に感謝して祝うもので、三晩続けて巫女に選ばれた娘が千年杉の櫓の上で真夜中から夜明けまで踊る慣わしがあった。
 その巫女に選ばれた岩田美佐は山口医師の息子、茂と知り合う。
 彼は田舎暮らしが大嫌いで、最初は不貞腐れていたものの、祭り太鼓を通して、美佐をはじめ、田舎の人々と打ち解けていく。
 また、彼は、美佐の姉の初江が村一番の太鼓打ちの洋介と四年前の冬、心中したことを知る。
 だが、美佐は二人が心中したとは決して信じていなかった。
 そして、迎える祭の夜…」

・「パパ!」(1971年「別冊マーガレット」9月号)
「山崎恵子は、写真部の部長と喫茶店でお茶をしていた時、父親が見知らぬ女性といるところを目撃する。
 その女性は父親の初恋の女性で、恵子は小さなとき、アルバムで見たことがあった。
 父親が母親以外の女性と付き合うことにショックを受け、恵子は夜更けに家をとび出してしまう。
 父親と写真部部長が彼女を捜しに出ると…」

 「銀色の髪の亜里沙」は和田慎二版「モンテクリスト伯」です。
 当時としてはショッキングな復讐劇だったようで、和田慎二先生のサスペンス&ミステリーものの代表作の一つに数えられます。
 「お嬢さん社長奮戦中!!」「パパ!」はライトな少女漫画。
 個人的には、都会から来た少年と田舎の少女の出会いと過去の心中事件が絡む「冬の祭」がベストです。
 幽霊譚としては、隠れた佳作なのではないでしょうか?

2023年6月1日 ページ作成・執筆

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