柿崎普美
「スターダスト・ストーリー@」(1982年10月30日第1刷・1986年9月15日第8刷発行)
「スターダスト・ストーリーA」(1982年11月30日第1刷発行)

 収録作品

・「スターダスト・ストーリー」(1982年「週刊マーガレット」7号〜14号)
「第1話 マリオネット・ゲーム」(@収録)
 高校二年の高政徹也は三年ぶりに生まれ故郷に戻り、青柳高校に転入する。
 彼はそこで、幼馴染だった少女、白川明(あかり)と再会する。
 しかし、ドジでトロマで泣き虫だった面影はなく、成績はトップで、生徒会長として君臨していた。
 更に、彼女は「TMC(トップ・メンズ・クラブ)」を率いており、そのクラブに入った生徒は皆、成績もスポーツも人間離れをしているほど、優秀になる。
 徹也は明の変貌に戸惑うが、徐々に、彼女やTMCの面々に違和感を抱いていく。
 明に敵対したり、逆らう人々はに皆、何らかの不幸やトラブルに見舞われ、また、TMCのメンバーは、生気の抜けた人形のようで、人間味が全くない。
 明のスクープを狙っていた新聞部員が発狂したことから、徹也は生徒会室(?)に踏み込み、明に詰め寄る。
 そこで、彼は明の秘密を知ることになるのだが…。
「第2話 プライベート・緑」(@収録)
 早船流歌(るか)は、物心ついてから、名前もわからぬ女性に助けられる夢をしばしば見る。
 ある日、南中の彼女のクラスに、夢で見たのとそっくりな少女が転入してくる。
 彼女の名は星河緑といい、男子生徒に絡まれた流歌を助けてくれる時には、夢と同じ、雰囲気であった。
 流歌は緑に関心を持つが、ある事件をきっかけに、彼女が宇宙人(ルーカス星人なんだってさ、ジョージ!!)であることを知る。
 彼女は宇宙軍の兵士で、地球に送りこまれた細菌兵器、ファージの根絶がその任務であった。
 そのファージが、最近、南中で頻発する暴力事件の原因らしい。
 流歌は、緑に協力して、ファージの居所を突き止めようとするのだが…。
「第3話 ファイナル・テスト」(A収録)
 沖本成美は、兄の亮を頼りにする、ブラコン娘。
 スポーツ万能で人気者の兄に対して、成美はドジでノロマな、いじめられっ子。
 だが、ある時、あまりにひどい仕打ちに、成美が感情を爆発させると、教室の窓ガラスが粉々になる。
 気絶した成美は、夢を見るが、夢の中で、成美は「ナール」、亮は「リョーシア」という名前で、悪魔のように都市を壊滅させる「ナール」を「リョーシア」が止めようとしていた。
 しかも、亮は、その夢について聞くと、顔色を変える。
 次々と異変が起こる中、、成美は、亡くなった両親に対して違和感を感じ、生まれ故郷の町を訪ねる。
 だが、彼女の記憶にある人々は、彼女のことを全く覚えていなかった。
 そこに、亮が現れ、彼女に「もう一度記憶をとじこめる」よう言う。
 しかし、犬に襲われたことから、彼女は記憶を取り戻してしまう。
 兵器用超能力者として育てられたヴォ―クト人(注1)としての過去を…。

・「やさしくうたって!恋人たち」(1974年「週刊マーガレット」49号/A収録)
「ベン・サンプスンは安酒場専門のバイオリン弾きの老人。
 ある夜、ポーカーで買った金で高級な酒場に入るが、そこで、ダニエラという、二十歳ぐらいの娘のピアニストと知り合う。
 彼女は、両親を高校の時に亡くし、それでも、コンサートの夢をあきらめず、酒場でピアノ弾きをしていた。
 また、彼女には、エルダー・ルイスタンという、前途有望な指揮者の恋人がいたが、どうしても、自分の力を試してみたいと、彼と別れていた。
 ベンはダニエラを応援するために、彼女と共に酒場で働き始める。
 ある夜、ダニエラの楽屋を、エルダーが怒鳴り込んでくるのだが…」

・「青い星のメルヘン」(1977年「週刊マーガレット」正月増刊号/A収録)
「ジェフ・ニューマンは、「ブルーフェアリ」という絵であるコンクールに入賞し、画家としての一歩を踏み出す。
 彼の脳裏には、七年前、町はずれの屋敷に住んでいた少女の面影がいつも存在していた。
 彼が「ブルーフェアリ」と名付けた、名もわからない少女は、青い瞳に水色の髪の毛で、彼は、彼女の絵を描くために半年の間、毎日屋敷に通う。
 そして、彼女が引っ越す日、彼女に、彼女を描いた絵を半ば強引にプレゼントしたのであった。
 その思い出のある屋敷に、トーラ・メイスンという娘が引っ越してくる。
 彼女は、17歳という年齢にも関わらず、多くの博士号を持つ天才科学者であった。
 彼女は、彼の「ブルーフェアリ」の絵を見て、感動したと、彼に、自画像の依頼をする。
 彼は屋敷に住み込み、彼女の絵を描くが、そのうちに、彼女に対して奇異な体験を幾つもすることとなる。
 彼女の正体とは…?」

 「スターダスト・ストーリー」は時代を考えると、SF漫画の名作の一つではないでしょうか?
 柿崎普美先生特有のややこしいストーリーも、中編ぐらいだと中だるみせずに、タイトにまとまっています。
 あと、安易にハッピー・エンドで終わらせないところも、ビターな味わいでグー!
 「青い星のメルヘン」も、ラブロマンスの入ったファンタジーSFで、柿崎先生の趣味がもろに出ていて、良い出来だと私は思います。

・注1
 「宇宙船ビーグル号の冒険」で有名なSF作家の「A・E・ヴァン・ヴォ―クト」から採ったんでしょうね。(作品、ほとんど読んでませんが…。)

2020年6月26・27日 ページ作成・執筆

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