あつたゆりこ「超常のテレカ」(1989年7月30日第1刷発行)

 収録作品

・「超常のテレカ」(「ザ・マーガレット」1987年22号)
「第1話 悪魔のテレホン」
「引っ込み思案で、陰気でのろまな、神崎美香。
 毎日、優等生の泉悦子や小山桂子にいびられるが、一番耐えがたいのは、憧れの宗方昇に二人がべたべたとくっついて回ること。
 ある日、美香は金券ショップで、操られるかのように一枚のテレホンカードを購入する。
 それは奇妙な図柄の描かれたテレカであった。
 美香は、公衆電話でこのカードを使い、泉悦子に電話をかけると、悦子は何者かに襲われ、重傷を負う。
 そして、同じように電話をかけた小山桂子も再起不能なほどに半殺しにされる。
 このテレホンカードを使えば、憎い相手にひどい目にあわせることができることに美香は気付く…」
「第2話 過去へのコール」
「五年前に両親が事故死して以来、どんどんぐれ始めた桜井真希。
 生前の両親は仕事で忙しく、真希はろくに構ってもらえなかった。
 五年前、誕生日をすっぽかされ、真希は、出来心で万引きをして捕まってしまう。
 その真希を警察に迎えに来る途中、両親が事故死してしまったのであった。
 世話になっている叔父夫婦のもとをとび出した真希は、公衆電話で奇妙な図柄のテレホンカードを見つける。
 何気なしに、両親が生きていた頃の電話番号にかけてみると、電話に出たのは、真希の母親であった。
 驚いた真希が電話ボックスから出ると、そこには五年前の真希が住んでいた町であった…」
「第3話 生命の度数」
「藤本里美は、公衆電話で奇妙な模様のテレカを手に入れる。
 里美は、テレカの度数が自分の寿命で、度数が尽きた時、死んでしまう、悲劇のテレカだったら…と、ボーイ・フレンドの卓己に話す。
 しかし、そのテレカを入手してから、里美の体調は急激に悪化。
 また、毎晩、電話のベルが鳴ると、恐ろしい幻覚を見るようになる。
 テレカのことに思い当たった卓己は、人手に渡ったテレカを取り戻すべく、あちこち駆け回るのだが…」

・「真実のコール 〜超常のテレカ〜」(「週刊マーガレット」1987年30・31合併号)
「川合ゆみと、ミキと直子は大の仲良し。
 また、三人ともバレーボール部の岡崎昇に憧れていた。
 ある日、ゆみは公衆電話で奇妙な模様のテレホンカードを手に入れる。
 そのテレカは、電話をかけた相手が本音を話し出す、魔性のテレカであった。
 試合の応援がきっかけで、岡崎昇とゆみの仲は急接近するが、それがゆみを追い詰めることとなる…」

・「ロンリー・ハート」(特別描き下ろし)
「ふみえのボーイフレンド、透は事故で長期入院をしていた。
 その彼が、病院で闘病生活を送っている、実力派歌手マリエと仲良くなる。
 毎日、マリエの病室を訪れる透に、ふみえはやきもき。
 透が退院する日、マリエも退院することになり、その際に、マリエは生の歌声の入ったテープを透に渡す。
 退院後、透は二度も自殺未遂を起こすが、本人は全く記憶にないと言う。
 心配したふみえがマリエの歌が入ったテープを聴くと、それは「死の世界」を歌ったものだった…」

 あつたゆりこ先生が最後に出したマーガレット・コミックスの単行本です。
 それ以降、作品を発表されているのかどうか、わかりません。
 個人的には、漫画家を引退されたのでは?…と推測しておりますが、小室しげ子先生のように他のジャンルに活躍の場を移した可能性もあります。(確認は取れておりません。)

 さて、この単行本に関してですが、内容はいいと思います。
 グロ度は他の作品よりも低い方ですが、「超常のテレカ」ではギーガーのエイリアンちっくなモンスターが暴れており、こちらの期待を裏切ることはありません。
 特に、「第3話 生命の度数」のバッド・トリップ描写は出色だと、私は思います。
 最後は、特別描き下ろしの「ロンリー・ハート」で締めますが、打って変わって、ロマンチックなホラーです。
 こういうマンガが、あつたゆりこ先生が本来描きたかったものだったのかもしれません。

2016年4月4日 ページ作成・執筆

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