わたなべまさこ「バネッサの世界」(1995年1月25日第1刷発行)

 収録作品

・「バネッサの世界」
「テリー=ツェッペリンとジャニス=モーガンは恋人同士。
 テリーは名門ツェッペリン家の息子で、ジャニスの兄、ホープ=モーガンと親友であったが、ホープが外国で行方不明となり、彼がジャニスを屋敷に引き取ったのであった。
 二週間後に結婚式を控えたある日、テリーは湖で心中した男女を発見する。
 二人を屋敷に運び、友人のロック=スクエア―を呼ぶと、男は助からなかったが、女の方は息があり、意識を取り戻す。
 女の名はバネッサといい、非常に美しい娘であった。
 ジャニスは彼女に何故心中したのか尋ねるが、死んだ男は名前も知らない男だという。
 バネッサは順調に回復し、ジャニスは帰る家もないという彼女をテリーの屋敷に置こうと考えるが、ロックは反対する。
 彼はバネッサが召使のバーズを籠絡していることに気付いており、彼女が危険だと薄々感じていた。
 ロックの危惧通りに、バネッサはブーンから屋敷やテリーのことを聞き出し、テリーを誘惑。
 テリーはバネッサの魅力に身も心も奪われ、結婚式の三日前にジャニスとの結婚を破棄する。
 ジャニスは自殺を図るものの、ロックに助けられ、傷心を抱いて、ツェッペリン家を去る。
 三日後、テリーとバネッサの結婚式が行われるが、彼女はテリーの弟、トレインに色目を使い、彼をも虜にする。
 ロックはトレインとバネッサの仲に気付き、テリーが仕事で出張した後、バネッサを問いただす。
 しかし、その時のバネッサは非常に怯えており、自分を縛り、部屋に閉じ込めておくよう頼む。
 彼女は自分の中に「もう一人のわたし」がおり、それは姉のガイだと打ち明ける。
 だが、彼女の中には姉よりも恐ろしい人格が存在していた。
 男を次々と破滅させるバネッサの運命は…?
 そして、ジャニスの愛が報われる日は来るのだろうか…?」

・「死女の恋」
「松井節郎は東京で一人暮らしの予備校生。
 彼は友人の山本から、破格の値段のアパートを教えてもらう。
 そのアパートは渋谷のお屋敷町の真ん中にあり、1DK、バス・トイレ付きで月一万円。
 ただし、安いのには理由があり、この部屋に住んでいた男が三人、立て続けに部屋の窓から飛び降り自殺していた。
 最初の住人はエリート商社マン、次は大学の助教授、三人目は牧師であったが、三人とも自殺する理由は全く見当たらない。
 とは言うものの、月に一万円は魅力的で、松井の実家が寺ということもあり、そのアパートに住むことにする。
 引越し後、彼は早速勉強に励むが、机のそばの窓が妙に気になる。
 その窓は北側にある細長い窓で、三人の男が跳び下りた窓であった。
 その窓からは紅葉の陰に隠れて隣家の窓が見え、ここに現れる女性の姿に松井は心を惹かれる。
 彼女と意思疎通をするようになってから、彼は彼女に夢中になっていく。
 窓辺の女は何かを縫っているようなのだが…」

 「バネッサの世界」は「多重人格もの」のサスペンスです。
 ただ、バネッサの過去についての説明がなく、彼女が何故「多重人格」になったのかよくわかりません。
 そのため、バネッサの多重人格という設定がいまいち説得力を持たず、単なる「毒婦」っぽい話になっているのが難点です。
 その代わりと言っては何ですが、もう一人のヒロインであるジャニスが愛を貫くドラマは実に力が入っていて、読みごたえがあります。
 「死女の恋」は男を自殺に導く女幽霊を描いた小品です。
 わたなべまさこ先生らしく、セックス描写がねちっこく、救いのない話が更にデロデロになってます。(最も印象に残ったのは、脱ぎ捨てられるブリーフでした…。)

2024年2月4日 ページ作成・執筆

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