ボウツハルミ「アザレア 新四谷怪談」(2022年2月10日初版発行)

・「第1話 愛衣」
「田宮優也は伊東国際物流の営業部第二営業課課長。
 夜、彼がマンションの部屋に帰ってくると、台所に愛衣の姿があった。
 彼がマンションから突き落として殺したはずの…。
 彼女はミネストローネを作り、彼に食べるよう促す。
 何度も…」

・「第2話 優也」
「彼が見たのは全部、悪い夢…。
 愛衣は確かに死んでいた。
 インスタントコーヒーで一服していると、ぺたっ、ぺたっと足音がする。
 見ると、愛衣らしき足首が床に足跡をつけていく。
 彼は愛衣を捜すのだが…」

・「第3話 黒い影」
「話は数か月前に遡る。
 田宮優也と愛衣は結婚式をあげ、幸せいっぱいであった。
 だが、それ以来、彼は「黒い影」につきまとわれるようになる。
 それは彼をじっと見つめているようで、視えているのに気づかれないよう、ひたすら無視するしかない。
 ある日、彼を目の仇にしている部長の荒木が休憩に行くとき、黒い影が彼に寄り添っているのを目にする。
 荒木は戻ってこないまま、退社時間になり…」

・「第4話 聖者」
「会社の副社長の伊東沙希子が韓国から戻ってくる。
 過去、優也は彼女のマゾ奴隷であった。
 彼女は彼に愛衣は「魔女」で、彼とその周囲に災いをもたらすと警告する。
 そして、災いから逃れるには、愛衣と別れるか、それを滅するしかない…」

・「第5話 愛してる」
「愛衣の正体を知るも、優也は沙希子の命令と愛衣との愛の間で板挟みとなる。
 苦悶する彼に愛衣はひたすら彼への愛を訴え続け…」

・「第6話 転落」
「愛衣は優也への愛を証明するため、アザレアの花を食べる。
 しかし、それが彼女に恐ろしい結果をもたらす。
 愛衣は優也にすがろうとするが、その彼女を彼は…」

・「第7話 降臨」
「(第2話の続き)
 彼は全ては悪い夢と思い込もうとするが、本当の悪夢はこれからであった。
 彼の左手は愛衣にとり憑かれ、彼を死の世界に引きずり込もうとする。
 彼は左手を切断するが…」

・「最終話 永遠」
「彼の部屋に伊東沙希子が現れる。
 彼女はシスターで、愛衣を祓おうとする。
 愛衣は沙希子の中に入り込むが、これは沙希子の思惑通りであった。
 この勝負の行方は…?
 そして、優也の運命は…?」
(「マンガTOP」2021年2月〜9月配信分)

 名作怪談「四谷怪談」を現代風にアレンジした作品です。
 キャラの設定が弱かったりと多少の難はありますが、「四谷怪談」でお馴染みの唐突かつショッキングな幻覚描写は頑張っていて、個人的には好感を持ちました。
 また、終盤、何故かシスターが悪魔祓いに乗り込んでくるのも(バカバカしくも)面白かったです。
 ただし、「四谷怪談」のお岩は非常に弱い立場にあり同情してしまいますが、この作品の愛衣は恐ろしく粘着質&ストーカー気質で、さほど感情移入ができません。(あと、急に「魔女」って言われてもなあ…。結局、何者なんですか、あの人?)
 そこが評価の分かれ目となったのか、連載中は結果を残せなかったとのことですが、令和の世に「四谷怪談」にチャレンジした作品としてホラー好きは読まれて損はないように思います。

2025年6月10日 ページ作成・執筆

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