細野不二彦「バイオ・ハンター」(1999年9月29日初版第一刷発行)

 ある大学の分子生物学教授、越ケ谷一郎(チンチクリンな方)と駒田(ヒゲを生やしている方)。
 彼らは、悪霊や物の怪の退治を行う「バイオ・ハンター」として知られていた。
 越ケ谷は生物学的なアプローチから謎を追求し、一方の、駒田は、デモン・ウイルス(後述)をコントロールし、変身できる特殊体質で、モンスターと戦う。
 彼らが直面する、奇怪な事件の数々とは…?

・「DEMON1 人面疽」
「越ケ谷と駒田はヤクザの親分から助けを求められる。
 彼の娘、真理絵は人面疽に感染していた。
 越ケ谷は人面疽の原因が「デモン・ウイルス」と見抜く。
 デモン・ウイルスとは、自分の遺伝子を他の生物の遺伝子に組み込み、肉体的・精神的に変化されるという、レトロウイルスの一種であった。
 特製ワクチンを注射し、ひとまず症状を抑えたものの、見落としがあり、ウイルスが全身に進行。
 娘は異形と化し、駒田は変身して取り押さえようとするが、ヤクザの親分は駒田をモンスターと勘違いして撃ち、逃げられてしまう。
 六時間後、娘が男友達のマンションにいると知らされ、越ケ谷と駒田はその部屋に乗り込むのだが…」

・「DEMON2 死人憑き」
「駒田は、屈強な男達に誘拐されかかっている少女を助ける。
 少女の名は「さやか」といい、村上卜堂という占い師の孫娘であった。
 越ケ谷は卜堂に世話がなったことがあり、彼の隠れ家に、さやかの案内で向かう。
 途中、またもや襲撃にあったものの、ある山寺に身を隠していた卜堂に会うことができる。
 卜堂によると、彼を狙っているのは、自由共和党幹事長、多部正十郎。
 そして、卜堂が、多部正十郎を「死人憑き」と占ったことが理由であった。
 その夜、正十郎の部下に、卜堂とさやかがさらわれ、駒田は爆弾で右手を失う。
 だが、駒田の右手は生きており、正十郎の潜伏先に運ばれていた。
 右手に呼ばれ、越ケ谷と駒田は、正十郎の所有する島に潜入する…」

・「DEMON3 金目羅(キメラ)」
「ゼミ生が持ち込んできた、血の付いたタオル。
 彼は、昨夜、様々な動物が一体となった怪獣を車で轢き、その血だと話す。
 越ケ谷がその血を分析すると、それは実験用のマウスに襲いかかり、消化。
 更に、越ケ谷にも襲いかかろうとしたところを、硫酸で撃退する。
 その後、越ケ谷と駒田は、この細胞一つに、様々な動物の遺伝子が混在していることを突き止める。
 どうも、状況に応じて、適した遺伝子を取り出して、変身しているらしい。
 そこへ、刑事が駒田を訪ねて来る。
 駒田の受け持つ学生の石上が行方不明になったのであった。
 越ケ谷と駒田が、石上のマンションを訪れると、不思議な娘と出会う。
 彼女は、ライセという名で、金目羅を祀る神社の娘であった。
 彼女によると、金目羅は「荒ぶる神」で、「生きとし生けるものをのみ尽くす」という。
 また、先日の交通事故で、金目羅は人間を憎むようになっているらしい。
 彼女の協力を得て、二人は金目羅を止めようとするのだが…」
(「コミックバーガー」1989年22号〜1990年1号、6号、7号、9号、10号、1990年20号〜24号までに掲載されたものに加筆)

 大ベテランの細野不二彦先生は、幾つか怪奇漫画を描かれております。
 その中で、「バイオ・ハンター」は、グロ描写が冴えまくった、隠れた傑作でありましょう。
 グロ描写は派手でも、ストーリーはなおざりにされることなく、若干にユーモアも交えつつ、テンポよく進みます。
 (多分)三作で終わったのが惜しまれますが、かなり濃い内容で、細野先生としてはキツかったんでしょうね。(あと、細野先生はいろんなジャンルに挑戦しておりますが、この手の漫画には肌が合わなかったのかも…。)
 ただ一つ、気になったのは、セックス描写。
 掲載誌の読者層に配慮したのかもしれませんが、あまり必要性が感じられませんでした。

 1995年にはOVA化されております。
 強烈なエロ・グロ描写で、そのスジでは有名な作品です。

2020年4月20・21日 ページ作成・執筆

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