美内すずえ「黒百合の系図(1978年1月20日初版・12月5日2版発行)
収録作品
・「黒百合の系図」(1977年「ララ」9月〜12月号掲載)
「北条安希子の母は突然、不審死を遂げる。
今まで何の問題もなかったのに、母の様子がおかしくなったのは、庭に黒百合の花が咲いてからであった。
また、葬式に母の親族は一人も参加せず、知り合いを名乗る老婆が一人だけ焼香を上げに来る。
その老婆から黒百合について聞かれ、安希子は母親の死について調べる決心をする。
だが、母の過去についてわかっていることは旧姓が「飛竜」で、出身が「鬼姫谷」ということだけ。
安希子は、旅行家の田代源太郎の協力を得て、ようやく鬼姫谷に到着。
そこで、飛竜家が過去、この地を治めた城主だったことを知る。
更に、寺の住職からこの地に伝わる「鬼姫伝説」と飛竜家の祟りの話を聞かされる。
飛竜家の祟りとは、城建築の際の人柱にされた娘によるものであった。
以来、飛竜家の一族はことごとく、非業の死を遂げ、死ぬ前には、黒百合が咲くと言い伝えられる。
そして、安希子は飛竜家の最後の一人であった。
東京に戻った安希子は数々の怪異に見舞われる。
田代源太郎は、安希子を救うために、呪いを解こうと奔走するのだが…」
・「泥棒シンデレラ」(1975年「花とゆめ」24号掲載)
「望は平凡な女子学生。
だが、その心は他人への羨望で満ち溢れていた。
美貌、お金、才能、そして、素晴らしい恋人…。
ある日、車にはねられたことをきっかけに、望は特殊な能力を得る。
それは他人のものを欲しいと思うと、相手がそれを失う代わりに、手に入れることができるのであった。
望は欲しかったものを次々と入手するが、それによって、相手を傷つけていく…」
「黒百合の系図」は、オカルトものに歴史ミステリーをうまく絡ませた傑作です。
四十年前の少女漫画なので、軽く見る向きもありましょうが、心霊写真やラストの鬼姫等、幽霊の描写に関しては、他の追随を許しません。
最近は、スピリチュアルな心霊マンガがたくさんありますが、読んで怖いと思うことは皆無に近いです。
それなのに、美内すずえ先生や山岸涼子先生の幽霊はいまだに迫力があるのは何故なのでしょうか?(そう思うのは私だけ?)(注1)
ちなみに、この作品、魔夜峰央先生のアシストが入っているとのことです。(毒蛇のシーン)
「泥棒シンデレラ」は一応はファンタジーなのでしょうが、顔に硫酸を浴びたり、血を吐いたりといったショック描写があり、ホラーに近い手触りです。
個人的には、ラストがハッピー・エンドなのがちと納得いきません。
「黒百合の系図」は、「美内すずえコレクション 黒の書 妖鬼妃伝」(宝島社/2017年8月26日発行)にて手軽に読むことができます。
こういう過去の怪奇マンガの名作を、作者による詳しい解説付きで、まとめて読むことができるなんて、何とも幸せなことであります。
・注1
「頭のなかに浮かんだ映像」(「美内すずえコレクション 黒の書 妖鬼妃伝」p376より引用)というのが強みなのかもしれません。
2018年1月25日 ページ作成・執筆
2018年4月11日 加筆訂正