白川まり奈「人喰い円盤」(1975年7月20日初版発行)

「江戸時代。奈良と大阪の間にある村。
 百姓達は日照りと旱魃のために、餓死寸前であった。
 餓死者が大勢出ているにも関わらず、年貢の取り立ては過酷を極め、百姓達には「極楽浄土」を祈ることしか慰めはない。
 ある夜、村の寺の上空にUFOが現れ、UFOから照射される光の中から観音さまが現れる。
 観音さまは和尚に、皆を極楽に連れて行くと告げる。
 次の夜、古寺に集まった村人達の前に、観音さまがその神々しい姿を現わす。
 だが、極楽に連れて行かれるのは、病人や女子供ではなく、何故か、丈夫な者やよく太った者のみ。
 残された村民達は観音さまの再訪を熱望するが、UFOは二度と村を訪れることはなかった。
 しかし、村に残った庄屋と、古寺の次の和尚は残された手がかりから観音さまの正体を薄々察する。
 だが、二人は真相を秘密にしたまま、この世を去る。
 そして、現代。
 庄屋の子孫である、斉藤もとむは二上山の麓にある当麻寺(たいまじ)でUFOを目撃する。
 UFOの後を追い、二上山を越えたところにある、どんづる峰に登ると、そこには「円盤教」の信者達がいた。
 彼らは円盤を神と崇めており、明後日の朝と晩に円盤がここに現れ、皆を「すばらしき新世界」に連れて行ってくれると話す。
 もとむはその話に心が動くが、病床にある祖父から円盤には乗ってはいけないと諭される。
 そして、もとむの祖父は、江戸時代にUFOに連れ去られて、生還した庄屋の弟の体験談を話し始める…」

 怪奇マンガ・マニアには有名な「UFOシリーズ」の第一弾です。
 一応、「UFOシリーズ」は三部作でありまして、残りの「どんづる円盤」「侵略円盤キノコンガ」は復刻されておりますが、本作のみ未復刻です。
 まあ、理由は薄々見当がつくように、「人喰い」がネックだったようです。
 個人的には、「UFO」meets「ソイレント・グリーン」なように感じました。(そんな単純な内容ではありませんが…。)(注1)
 実際、読むと、かなりヤバい、かつ、よくよく考えると、メチャクチャな内容です。
 結末を目にしたら、開いた口がふさがらない人、多いんじゃないんでしょうか?
 いやもう「取って付けた」感に溢れています。(そんな理由で日本人を選ばれても…。)

 ちなみに、白状いたしますと、この文章は、犬田一さんの「イヌノキュウカク」(もう存在しないみたいです)に掲載されていた「人喰い円盤」紹介文の焼き直しに近いです。
 恥ずかしい話ではありますが、その点、お断りをしておきます。

・注1
 作品の中では、「銅鐸」や「練供養(ねりくよう)」等について、あれこれ蘊蓄が述べられております。
 また、UFOに関しては、カバーの袖に、自身で撮影したUFOの写真を掲載するほどの凝りようです。
 一昔前には、UFOに対する憧憬は、私達の想像を絶するものだったようですが、やはり皆さん、ロマンチックだったんでしょうか?
 今では、バカ騒ぎ以外の何物でもない、空疎極めるテレビ番組のために、すっかりUFOへの夢や憧れは色褪せてしまったように感じます。

・備考
 本体下部に歪み。研磨あり。スリップ付。

2017年4月20日 ページ作成・執筆

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