好美のぼる「妖怪樽のぬし」(1973年8月15日初版発行)



「雪国の古い城下町に、古い二軒の酒造会社があった。
 一軒は加茂家といい、清酒「雪路」を、もう一軒は下条家といって、清酒「越の雪」をつくっていた。
 両家は創業以来から商売敵として、互いにいがみ合い、競争し合う間柄であった。
 それは両家の娘にも共通し、下条春子と加茂秋子は何かにつけ火花を散らしていた。
 と言っても、負けん気が強く、ヒステリックな加茂秋子が一人騒いでいるだけで、下条春子は根の優しい、大人しい少女であった。
 今年の発表会では、金賞を全部、春子にさらわれ、秋子はすっかり勘尺玉。
 更に、春子の母と秋子の父を再婚させる動きがあり、そうなればあの春子と姉妹となるわけで、ますます春子に対する憎悪を燃やす。
 そこで、下条家の酒造会社を潰すために、秋子は下条家の水源地を探し出し、そこに毒薬を仕込む。
 新酒「越の雪」が出回って数日後、「越の雪」に入っていた毒による死者が多発、被害者は云百人に上る。
 春子の酒造会社は倒産、母親は責任を取って縊死を遂げる。
 賠償金のために家工場を売り払った後、春子は朽ち果てた、無人の農家に酒の樽一つ持って、婆やと共に移る。
 すっかり元気をなくした春子は、学校にも行かず、ふさぎ込んで過ごす。
 そんなある日、托鉢の坊主がふらりと春子のもとを訪れる。
 坊主は、春子の母親に頼まれて、力になりに来たと話し、母親を弔うためにと、外の樽の中に住みつく。
 一方、秋子の父親の運営する酒造会社では怪異が続出していた…」

 好美のぼる先生お得意の「因果応報」ストーリーです。
 どん底のそのまた底まで突き落として後で、悪者がいろいろとひどい目にあい、あっけらかんとしたハッピーエンドを迎えるのがパターンなのですが、この古臭さがいいんですよね〜。
 また、ヤケクソ気味な「祟り」描写も味わい深いです。(正直、理解不能です。)
 ただ、一つ気になるのは、悪事に加担していない秋子の父親まで呪いを受けること。
 このせいで、何かモヤモヤして、読後感は個人的にはイマイチでした。

・備考
 経年の痛みあり。

2016年9月13日 ページ作成・執筆

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