日野日出志「死肉の男」(1998年12月25日初版発行)

「浜辺の村に現れた、異臭の男。
 彼は、身体のあちこちが腐敗した水死体であった。
 警察に捕らえられた彼は、北浜大学医学部付属病院に運ばれ、検査を受ける。
 検査の結果、彼のあらゆる細胞は死んでいるが、普通の人間のように動き、喋り、考えることができるという、考えられないもの。
 とりあえず、医者達は、腐敗の進行を抑え、細胞を蘇らせるために様々な治療法を試みる。
 また、腐乱した外見を隠すために、彼を人工皮膚で覆う。
 だが、多大の苦痛をもたらす治療法や、自分が何者であるか?という疑問に憑りつかれ、彼は病室から出すよう主張するようになる。
 そして、ふとしたことから、一人の医者を死なしてしまい、病院から脱走。
 警察からも追われる身となった彼は、身を隠しながらも、図書館で、自分が何者か調べる。
 ある新聞記事で、彼は全てを思い出し、自分の家族のもとへと向かうのだが…。
 死肉の男に安らぎは訪れるのであろうか…?」

 1986年にヒバリ・ヒット・コミックスで描き下ろされた「怪奇!死肉の男」を蒼馬社から再刊したものです。
 作者のあとがきによると、この作品を描く数年前に入院し、以来、体調不良が続いていたものの、生活のために描かざるを得なかったとのこと。
 そんな苦しい日々の中、「オレの肉体はもうだめかもしれない。…オレが今死んだら、妻や子供たちはどうなるんだろう!?」という不安に苛まされ、この作品にはそんな思いが込められていると書かれております。
 その事実を知って読むと、なかなかに胸に迫るものがあるのではないでしょうか。
 また、「死肉の男」はミステリー仕立てのため、同じテーマの「怪奇!死人少女」よりも読み応えはあると私は思います。

2019年10月14日 ページ作成・執筆

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