好美のぼる「不死身妖怪」(1973年6月29日初版発行)


「高校生の和美は、道で素敵な青年を見かけ、ぽ〜っとしているところを車にはねられてしまう。
 気が付くと、その青年の屋敷で和美は看病されていた。
 青年の両親は化学工場の社長で、足の骨折が癒えるまで屋敷で療養していいと話す。
 夢のような話にうっとりする和美であったが、この青年には秘密があった。
 この青年は、プリンスとして汚物妖怪達に君臨していたのである。
 また、汚物妖怪とは、人間達の汚物が流れ込む、大都市の下水道に生まれた、一つ目の妖怪であった。
 プリンスと汚物妖怪達は、人間社会を崩壊させる手始めとして、夜道行く人をマンホールに引きずり込んでは、その人物に入れ替わっていく。
 ある日、和美の両親を、いとこの後藤進吉が訪ねる。
 彼は新聞記者で、この付近で、急に人柄が変わってしまう件について調査していた。
 和美に会った彼は、和美が別人であることを見抜く。
 実際、その和美は汚物妖怪が化けたものであり、正体を知られた汚物妖怪は進吉を下水道に連れ込む。
 そこで進吉は汚物妖怪達に捕らえられ、プリンスから、人類を滅亡させる計画について聞かされるのであった。
 一方、和美は、怪我が治っても、家に帰してもらえず、幽閉生活を送っていた…」

 個人的な評価ですが、私、こういうマンガ、大好きです!!
 まず、舞台が「下水道」というのが想像力を刺激します。(「ボディ・スナッチャー」が少し入っているのもいいなあ。)
 下水道と言えば、大都市の汚物の全てが流れ込むところでして、都市伝説の「白いワニ」(映画「アリゲーター」もよろしく)や「CHUD(チャド)」(注1)等を産み出したように、不潔で不気味、想像するだにおぞましい場所であります。
 そんなところで、妙にユーモラスな一つ目の妖怪が暗躍するなんて、どこか「ほっこり」しませんか?
(ちなみに、彼らの楽しみはメタンガスで酔っ払うことです。しょっちゅう酔っ払っては、プリンスに怒鳴りとばされております。)
 日野日出志先生の「毒虫小僧」よりも「下水道」での描写が早いこともポイントが高いです。
 また、これが最も重要なのですが、好美のぼる先生のマンガはストーリーが迷走するものが大半な中で、この作品は最後までテンションを保って、それなりに読ませます。
 汚物妖怪達が突撃隊を組んで人間達を襲う描写や、主人公達が下水道を脱出しようとする描写等、今現在から読んだら拙い描写であるものの、好美のぼる先生独自の「才気」走って、面白いと思います。
 もちろん、グロ描写も素晴らしい!!
 マンホールの中に引きずり込んだ人間をローラーで絞って、人間汁とつくる描写は、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」でのトラウマがある身としては「キュン」となってしまいます。(どこが「キュン」とするのかは秘密。)

 最後に、タイトルでは「不死身妖怪」と謳っておりますが、この作品に出てくる汚物妖怪は「不死身」と言われながら、消毒液であっさり溶けます。
 「世にウンゲロの種は尽きまじ」を訴えたというよりは、単なる誇大表現ですね。(さすがです…。)

・注1
 1984年のアメリカのホラー映画。
 ニューヨークの下水道に住む浮浪者達が、下水道に捨てられた核廃棄物の影響で、チャドという喰人ミュータントになるという話。
 「ホーム・アローン」の泥棒さんの一人、ダニエル・スターンが出演しております。

・備考
 カバー痛み。巻末に鉛筆にて数字の書き込みあり。

2016年9月9日 ページ作成・執筆

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