蕪木彩子「解剖」(1996年10月10日第1刷発行)

 収録作品

・「解剖」(「ホラーハウス」(大陸書房)1987年12月号)
「まなみは生物の木下先生にホの字。
 だが、グロ耐性は極端に低く、生物の時間、蛙の解剖の最中に、過って蛙を殺してしまい、卒倒。
 更に、下校途中、子供達が、腹が裂けて、瀕死の猫で遊んでいる場面に遭遇する。
 彼女は猫を助けようとするが、逆に引っかかれてしまい、そのはずみに、猫が入った段ボール箱を川に落としてしまう。
 帰宅後、まなみが入浴すると、天井に猫の怨霊が現れる。
 しかも、浴槽の中が蛙で溢れかえっているという幻覚が彼女を襲う。
 彼女は浴場からとび出すが、蛙と猫の祟りのためか、身体には異変が起きていた…」

・「生き腐れ」(「ホラーハウス」(大陸書房)1988年3月号)
「中尾あきよの級友、真弓は重度の腎臓病で、入院する身。
 ある日、あきよが真弓の見舞いに訪れた際に、彼女のいとこの岸直樹と出会う。
 彼に憧れていた、あきよは直樹と急接近、遂には恋人同士となる。
 だが、あきよが彼と付き合いだすようになってから、あきよの周辺に真弓の生霊が出没するようになる。
 あきよを危険にさらさないために、直樹は彼女から身を引くのだが…」

・「シンデレラの薬」
「高校一年生の若山由香。
 彼女は先輩の和彦に片想いをしており、そのために同じ高校に入ったという熱の入れよう。
 しかし、容姿にコンプレックスを持つ由香は、声をかける勇気さえない。
 そんな時、クラスの友人から「シンデレラの薬」の存在を知る。
 その友人の紹介で、由香は阿木美容クリニックを訪れ、「シンデレラの薬」を手に入れる。
 だが、飲み続けるにつれ、痩せてはきたものの、顔中、皺だらけ。
 それどころか、顔中、メスで切り刻まれる悪夢に毎夜、悩まされるようになる。
 遂には、額に爛れができ、由香はクリニックに行くが、そこで注射を打たれ、監禁されてしまう。
 「シンデレラの薬」の効き目は…?」

・「喰葬」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1988年7月号)
「まりこのボーイフレンド、白石公也は心臓病の手術を目前に控えていた。
 面会謝絶のため、彼とは会えず、まりこは寂しさと不安を隠せない。
 ある夜、彼女が家に帰ると、両親は出張に出かけて留守のはずなのに、人の気配を感じる。
 灯りを付けると、部屋の隅に、公也がうずくまっていた。
 彼は病室で一人死の恐怖に怯えることに耐えられず、まりこと一緒にいたいがために、病院から脱け出してきたと話す。
 まりこは病院に戻るよう説得しようとするが、彼の想いに心を打たれ、言葉にならない。
 翌朝、まりこが目覚めると、公也はすでに冷たくなっていた。
 彼と「一体」になるために、彼女が取った行動とは…」

・「飼育」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1988年8月号)
「山室圭一は容姿端麗、勉強もスポーツもトップ・レベル。
 彼は努力に努力を重ねていたが、両親は、彼を医者にして、医院の跡を継がせるため、更なる向上を求める。
 口答えは一切許されず、彼は部活も恋人も許してはもらえない。
 そんな「籠の鳥」同然の彼のストレス解消は、ペットの蛇を子供に見せつけて、脅すことであった。
 だが、その場を恋人に見られ、更には、脅した男の子は転倒して死んでしまう。
 その夜、寝床の彼が息苦しさで目を覚ますと…」

・「仮面の夢」
「内気でノロマ、ぶさいくな正田素子は典型的なイジメられっ子。
 だが、いくらイジメられても、彼女には、一学年上の先輩、立浪僚(たつなみ・りょう)という心のオアシスがあった。
 ある日、ふとしたきっかけで、彼女は化粧の魅力に取りつかれる。
 化粧さえすれば、いじめられっ子で冴えない自分が、華やかな別の自分に変わることができる。
 立浪僚への想いを胸に、彼女は化粧の技術を磨き、ダイエットに励む。
 その甲斐あって、遂に、彼女は立浪僚をゲット。
 しかし、度重なる化粧や無理なダイエットが祟り、彼女の肌は荒れ、化粧かぶれで爛れていき、それを隠すために、また過剰な化粧をするという悪循環に彼女は陥る。
 だが、ある日、彼女に嫉妬した女のせいで、すっぴん顔を僚に見られてしまう。
 最終的には、僚に捨てられた素子は、人並み外れた化粧の技術を使い、復讐を企む…」

・「告白」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1987年7月号)
「あるアパートで、男性の腐乱死体と、自分の眼球をえぐり取った女性が発見される。
 石原みどりという名の女性は、ことの経緯を刑事に語る。
 春、大学に入学した彼女は、矢沢俊之に一目惚れする。
 彼は、彼女が偶然に入った写真部の部長で、二人は恋人同士となる。
 卒業後、広告代理店のカメラマンとなった俊之は、モデルの美樹麗子との仕事で名声を得る。
 だが、俊之は美樹麗子と仲を深め、遂にはみどりを捨てる。
 みどりは悲嘆に暮れるが、彼が彼女のもとに戻ってくると信じる。
 そんな時、俊之と麗子は交通事故を起こし、麗子は死亡、彼は下半身不随となる。
 彼はみどりのもとに戻ってくるが、彼の心は…」

 講談社の怪奇ロマンコミック版から「ディオンヌ・コルベールの肖像」を削って、「シンデレラの薬」と「仮面の夢」を追加したものです。
 解説は、御茶漬海苔先生。
 あの御茶漬海苔先生が、蕪木彩子先生の描く「虫」が「「うっ」と思ってしまうほど気持ちが悪い」と書いてまして、最高の褒め言葉だと思いました。

2018年2月11日 ページ作成・執筆

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