高港基資「顔を見るな」(1998年10月15日初版発行)
・「安い車」
「中古店で見つけた掘り出し物の車。
ニューモデルで、事故車でもないのに、たったの99万円。
青年はその車を買うことを決めるが、商談の前に、ディーラーから清酒を勧められる。
ディーラーいわく、それがここの伝統らしい。
一週間後、無事に納車され、友人達とドライブに行く。
その帰り道、友人達が車の中でドタバタと騒ぐので、注意すると、皆、疲れて眠りこけていた。
その時は、誰かのいたずらか何かと思っていたが、同じようなことが何度も繰り返される。
特に、一人で運転していると、後ろの方で、小さな子供がはしゃいでいるような音がする。
そして、ある夜、彼はバックミラーに女の子の姿を見る。
翌日、友人が紹介してくれた僧侶が車を視に来るのだが…」
・「天井のおばあさん」
「椎原千絵は幼い頃から霊視能力があった。
小学三年生の時、一家は古いながらも一軒家に引っ越す。
ある和室で、彼女は、天井あたりに浮いている老婆の霊を視る。
老婆の霊はいたりいなかったりで、唯一、わかっていることはあの部屋で人が寝ることを好まない。
中学生になった千絵は、ある時、その和室でうっかり寝込んでしまう。
彼女は過去、この家であったことを夢で見るのだが、その後…」
・「捨てられていたもの」
「フリーターの倉田は、コンビニのバイトに出るために、朝の五時にマンションを出る。
出かける前に、ゴミ捨て場にゴミ袋を捨てると、先に捨てられたゴミ袋が動いたように見える。
バイトから帰ると、マンション前にパトカーが止まり、向かいのマンションの奥さんが警察官に連行されていた。
聞くところによると、小学三年生の息子を殺し、死体をゴミ袋で出したという。
以来、倉田はゴミ袋につきまとわれるようになる…」
・「公園のトイレ」
「平成八年(1996年)の夏。
京都在住の漫画家が、公園のトイレを舞台にした漫画を描こうと考える。
彼が左京区の住宅地の中の公園で背景用の写真を撮っていると、老人に大声で注意される。
老人はトイレの写真を撮ってはならないと言うが、ここは四年前、殺人事件があった場所であった。
以来、このトイレでは奇怪なことが度々起こっており…」
・「誤差」
「中学校の仲良し五人組が六年ぶりに会う。
彼らはそれぞれ違う道を歩んでいたが、話したり遊んでいるうちに、徐々に昔の自分を取り戻していく。
あるきっかけから、何故か何回も繰り返してしまう失敗の話になる。
すると、智行が自分は「どうしても人の数を数え間違える」と話す。
彼は昔から人と多めに数え間違えてしまうのであった。
飲んだ後、駅に向かう途中の地下道で、四人は智行に向こうから歩いて来る人数を尋ねるのだが…」
・「水底の音」
「池部はバイクをバイクを盗んでは、乗り回していた。
そして、飽きたら、決まった海岸から海へ捨てていた。
ある日から、彼は何を食べても飲んでも塩辛く感じるようになる。
食事はろくにとれなくなり、体調は悪くなる一方。
更に、ある時、トイレに行くと、生きた魚を排泄していた。
それだけにとどまらず…」
・「マッハの亡霊」
「ガソリンスタンドの店員、哲士は憧れの「マッハ」を入手する。
これは実に癖のあるバイクであったが、彼は乗りこなすことに無上の喜びを覚えていた。
彼は睡眠や食事の時間までも削ってバイクに乗るようになり、夢の中でさえもバイクに乗る。
ある夜、彼が目覚めると、部屋の隅のヘルメットの中に人の顔が見える。
ヘルメットは笑い声を立てながら、布団の周りを転がり、彼は部屋をとび出て、バイクで逃げ出す。
しかし、彼の背後には…」
・「ポスト爺」
「柿崎が子供の時、「ポストじじい」の噂があった。
使われているかどうかもわからない円柱形の赤ポストに人が住んでいると言う。
友人の古沢とドライブの帰り、噂のあったポストに立ち寄ってみる。
古沢はその噂話を鼻で笑い、ポストを蹴りつけただけでなく、投函口に水を注ぎ入れる。
以降、古沢はポストにいたずらされるようになる。
いつの間にかポストに排泄物、生ごみ、ゴキブリ、猫の死体といったものが投げ込まれるのであった。
ある時、古沢はいたずらの主を見つけ、その後を追う。
ある路地でその姿は消えるが、すぐ近くにポストがあった。
古沢はポストの投函口にライターオイルを注ぎ込み、火をつけるのだが…」
・「顔を見るな」
「土屋靖敏は写真を撮られるのをひどく嫌う。
特に、一人の時は絶対に写真を撮らせない。
その理由は、彼が高校の時にさかのぼる。
ある夜、彼は大学の願書の写真がないことに気付く。
締め切りは明日の朝で、彼は近くの証明写真機に行く。
だが、女性らしい先客がおり、なかなか出てこない。
しびれを切らし、声をかけ、中を覗くと、誰もいなかった。
気のせいと思い、写真を撮るが、最初のものは失敗。
次に撮ったものには、彼の背後から女性が徐々に姿を現そうとしていた。
もう一度撮れば、女性の顔をまともに見ることになり、それは絶対に避けねばならないと本能的に感じる。
彼が写った写真に現れる女とは…?」
・「付録漫画;マニアたるもの」
「おもちゃマニア&モデルガンマニアの高港先生のエッセイ漫画。高港先生のしたたかな一面を見ることができます。」
高港基資先生の初期の怪奇マンガ(「ヤング・キング」掲載?)を収録した単行本です。
実にバラエティ豊かな内容、かつ、巧みな構成で、作者の実力を堪能できます。
まあ、この単行本の作品はコンビニコミックで再掲載されておりますので、個人的に一番面白かったのは「付録漫画;マニアたるもの」。
一昔前はあんなリサイクルショップがあったなあ〜と感慨に耽ってしまいました。
2024年2月11日 ページ作成・執筆