浅井まさのぶ「カリガリ博士」(カール・マイヤー・原作/1978年6月1日初版発行)

「カリガリ博士が興業する所では何件も殺人事件が起こる。
 被害者は皆、同じ手口で、催眠術のショーを見た夜に殺されていた。
 証拠はないものの、シュミット警部はカリガリが怪しいと睨む。
 カリガリが、化け物屋敷と呼ばれている僻地の屋敷に移ったとの情報を得て、シュミットは屋敷を訪れる。
 だが、女中のエンマは宝石商のゼーマンだと嘘をつく。
 実は、エンマはカリガリに催眠術をかけられ、以来、彼のもとで働かされていた。
 カリガリは他にも人をさらっており、催眠術をかけては、悪事をさせる。
 しかし、カール・フレイザーという大学生だけは催眠術に抵抗して、脱出の機会を窺う。
 一方、シュミットは二度何者かに襲われ、カリガリの仕業だと確信を深める。
 部下を殺された後、彼はカリガリの屋敷を訪れるのだが…。
 カリガリのメーキャップの下の素顔とは…?」

 ドイツ表現主義の名画「カリガリ博士」(注1)のコミカライズ…かと思ったら、映画と全く違います。
 シュミット警部が、催眠術を使って悪事を企むカリガリ博士に挑む…という単純明快なストーリーで、映画の悪夢的・芸術的な要素は皆無です。
 詳しいことはわかりませんが、カール・マイヤーの原作はこんな感じなのでしょうか?
 あくまで個人の推測ですが、浅井まさのぶ先生が大胆に脚色して、このような内容になったのでは?と考えております。

・注1
 この稿を書くにあたり、「カリガリ博士」(1919年)を二十数年ぶりに再見しました。
 名画と言われるだけあって、興味深い部分はあるものの、百年前のサイレント映画なので、正直、キツいです。(注2)
 それでも、精神病者の語る犯罪劇というのは魅力的ではあります。(夢野久作「ドグラ・マグラ」に影響を与えたのでしょうか?)

・注2
 サイレント映画は今観ると、退屈な作品が多いのですが、喜劇だけは別!!
 チャールズ・チャップリン(「キッド」「黄金狂時代」)、バスター・キートン(「セブン・チャンス」「蒸気船」「探偵学入門」)、ハロルド・ロイド(「要心無用」)はどれもハジけ飛んで面白く、本気でお勧めです。
 どれも名画中の名画ですので、だまされたと思って、観てください。

2022年3月21日 ページ作成・執筆

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