高階良子「終わりのない夜」(1998年3月10日初版発行)

 収録作品

・「終わりのない夜」
「鳥羽翔太郎(ペンネーム)は、多少は名の知れた作家。
 彼の過去は抑圧のためか曖昧になっていたが、ただ一つ覚えているのは、彼が十歳の頃、殺人を犯したこと。
 彼には 唯一の肉親であった姉がおり、姉弟を超えた愛情を抱いていた。
 だが、姉は婚約者の男により絞殺され、彼はその男をナイフで滅多刺しにする。
 男は苦しみ悶えながらも、抵抗せず、刺されながらも、笑っていた。
 男の死体は海に消え、二度と上がらず、流れ者だった故に誰からも疑われずにすんだのである。
 そして、彼は、その時の満足感だけを心の支えに、今までやって来たのであった。
 ある時、彼は長い休暇を取り、旅行へ出かける。
 途中で道に迷い、トンネルを抜けると、海と山に挟まれた、うら寂しい町が広がっていた。
 その町の時に取り残されたような雰囲気が気になり、彼は足を止める。
 ふとしたきっかけから、姉によく似た娘と出会い、彼女が勤めている旅館に滞在することとなる。
 彼女の名前は、姉と同じ、祐美子であり、お互いに初めて会ったような気がしない。
 祐美子の両親は数年前に自動車事故で亡くなっており、年の離れた弟を養うために、働きに出ていた。
 彼と祐美子の仲は深まっていくのだが…」

・「たゆとう歳月のうつろ船」
「大学院生の長尾隆史は十歳の頃、海で溺れて、リイラという娘に助けられる。
 リイラは奇妙な潜水艇に乗っており、どこか遠い所からやって来たと話す。
 また、彼女は絶えず、何かの箱を携えていたが、これをなくせば、帰れなくなると言う。
 リイラに助けられて二日後、隆史は陸へと送り届けられる。
 誰も彼の話を信じてはくれなかったが、彼はリイラとの再会を願い、日々、海辺を散歩する。
 ある日、彼は、リイラが岩礁に打ち上げられているのを発見する。
 驚くべきことに、彼女は、彼が子供の頃と全く変わっていなかった。
 彼は気絶しているリイラを家につれて帰る。
 そして、彼女の箱を隠し、二人きりの生活を始める。
 彼女は、隆史のことを気にして、何度もこちらの世界に来ており、順応は早かった。
 だが、「うつろ船」の研究をしている菅谷教授が彼女に興味を抱いていた…」

・「妖かしの密林」
「アマゾンで、謎の怪樹がどんどん勢力を広げていく。
 その怪樹は、息をするものを片端から有機物に分解・吸収し、犠牲者は増える一方。
 怪樹をナパームで焼き払う計画が出るが、ジャーナリストのマリア・ブランカは反対する。
 彼女はジャングルに入り込み、インディオから女神と崇められているピラーニャに会いに行く。
 実は、ピラーニャと怪樹は「悪魔の巣」という場所で、天才的な頭脳を持つ医師によって作られたものであった。
 怪樹はもとはルナという娘で、医師の息子のトシローと愛し合っていたが、トシローの死後、彼を捜し求めるあまり、怪樹へと変身したのである。
 マリアはピラーニャにルナの説得を頼み、二人は樹の中心へと向かう。
 一方、ジャングルの地下、廃墟となった「悪魔の巣」の地下通路を、三人のならず者が黄金を求めて、進んでいた。
 そのうちの一人、日系人のニコル・イイダは土砂の中から、サバイバルナイフと美しい娘の写真の入ったペンダントを拾う。
 それを身に付けた時から、彼の身に異変が起こる…」

2020年2月3日 ページ作成・執筆

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