好美のぼる「妖怪百面相」(1969年2月20日初版発行)



・「妖怪一面相」
「大久保家の一人娘、久美子は夜中にひどくうなされるようになる。
 その都度、医者が呼び出されるが、原因がさっぱりわからない。
 うなされる時、久美子は天井のふし穴を指差しながら、非常に怯えて取り乱す。
 ふし穴から目が久美子を見つめ、天井からは笑い声や悲鳴が聞こえるのだった。
 しかし、両親が天井裏を調べようとしても、久美子は必至になって止めようとする。
 ある夜、うなされている久美子が口走った「上草履」という言葉に、久美子の父親はひっかかるものを感じる。
 一年前、大久保家の使用人の娘、園田雪子は久美子の「上草履」を盗んだと言われ、失踪していたのであった。
 久美子の父親が、園田家で行われていた、雪子の一周忌を訪ねた時、雪子の遺書を目にする。
 遺書では、雪子が自分が無実であると訴えていた。
 一年前の盗難事件と、現在の久美子の異変に関わりがあると考えた父親は、天井裏を調べる決心をする…」
 同じ出版社から貸本マンガとして出された「ふし穴からの悲鳴!」の再録と思いますが、未入手のため、確認が取れておりません。
 はっきり言って、メチャクチャなマンガです。
 ラストも意味不明で、カタルシス皆無です。(善が悪に勝ったって、そういう問題か?)
 もっと面白いマンガを再録して欲しかったです…。(「少女カメレオン」と「どくだみ少女」が気になってます。)

・「妖怪二面相」
 「妖怪アパート」(貸本/曙出版・文華書房)を再録したものです。
 素晴らしい巻頭ダイジェストが削られておりますが、代わりに5ページ分(タイトルに1ページ、見開きイラストが4ページ)描き下ろしのイラストがついております。
 これはこれで味があって、またいいです。

 「妖怪百面相」とのタイトルですが、貸本怪奇マンガを二つ収録した単行本で、タイトルはあまり関係ありません。
 まあ、現在となっては、好美のぼる先生の貸本怪奇マンガは非常に入手困難ですので、ありがたいと言えば、ありがたいです。(チョイスはビミョ〜ですが。)
 あと、この本は袖の文章がいいんです。(以下、全文掲載。)
「妖怪百面相といっても、この中には二面相しかのっていません。妖怪も数えれば千面相ぐらいあるかも知れませんが、まだまだ描き足りないことを感じます。
 妖怪たちは、あなたの心の中に住んでいます。あなたの家の縁の下に住んでいます。天井の上にもいます。
 しかし、この本をあなたの書棚に立てかけますと、この本の中へみんなはいってしまうというくらいです。どうか千面相になるまで、この本を可愛がってやってください。」
 これを読むと、天国の好美のぼる先生は、同じく天国にいる手塚治虫先生に対抗して、相変わらずB級怪奇マンガを描きまくっているのかな〜なんて、しょ〜もないことを考えてしまいます。

・備考
 貸本使用。糸綴じの穴あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2016年12月12日 ページ作成・執筆

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