藤子不二雄A「黒ベエ@」(2002年7月28日第1刷発行)

・「プロローグ」
 ハゲタカのハゲベエを頭に乗せ、何処からともなく現れた、謎の影男、黒ベエ。
 彼が行く先々で巻き起こす、世にも奇怪な事件の数々とは…?

・「第1話 ワニ料理」(「少年キング」1969年28号〜31号掲載)
 柿田アゲル(綽名はカキアゲ)は、家が魚料理屋のために動物を飼うことを許してもらえない。
 そんな彼のために、黒ベエはワニ(カイマンワニ)を持ってくる。
 アゲルはワニをテツゴロ―と名付け、店の水槽で飼ったところ、お客に大好評。
 しかし、資産家の息子、五利五郎のブルドッグを食べてしまったことで、テツゴローは五利家に連れて行かれる。
 間の悪い事に、五郎の叔父で旅行家のヒヒオがちょうど日本に戻って来て、テツゴローをワニ料理にしようとする。
 テツゴローを救うため、黒ベエは「影うつし」でテツゴローに乗り移る…。

・「第2話 スズキ・ミチオの秘密復讐計画」(「少年キング」1969年32号〜36号掲載)
「釣り具やの息子、スズキ・ミチオは、ぼーっとした、気の弱い少年。
 しかし、その実は「怪物のような心と頭と行動力の持ち主」であった。
 彼は自分に危害を与えた人物や動物をチェックし、黒星が限度を超えると、その人物や動物を「処刑」にする。
 黒ベエは彼にある種の親近感を抱いて、観察するが、自分の秘密を知られたことから、ミチオは黒ベエを「処刑」しようとする…。

・「第3話 しごく者・しごかれる者」(「少年キング」1969年36号〜41号掲載)
 ある高原で行われる新人社員教育。
 それは、モーレツ社員を作りあげるため、新人社員に旧日本軍風の兵隊訓練をさせていた。
 新人社員は二等兵と呼ばれ、社長の息子の佐戸(さこ)憲兵中尉の下、非人間的な特訓を受ける。
 中でも、気も身体も弱い吉村二等兵はひどくいじめられていた。
 社長(部隊長)が視察に訪れた時、吉村は社長に直訴する。
 表面上は優しかったものの、影で、社長は佐戸を、部下が言いなりになるまで訓練しなかったと体罰を加える。
 吉村に恨みを抱いた佐戸は翌日、「セミ捕り」をさせるが、これにはある企みがあった…。

 ブラック・ユーモアと奇想に溢れる佳作です。
 特に、「しごく者・しごかれる者」は「セミ・ホラー」の傑作でありますが、陰湿極まる訓練も特筆に値すべきだと思います。
 やはり、どのようなかたちであれ、戦争を体験した人は違うね…。

2019年4月8日 ページ作成・執筆

その他の出版社・リストに戻る

メインページに戻る