井出智香恵「闇のレジェンド」(1990年5月5日初版発行)

 アルケウス(精霊石)とは、処刑された魔女の子宮から取り出された、生命の種で、これを飲んだ人間は、望む限り、何度でも生まれ変われるという、神秘的な伝説がある。
 この精霊石は数百年前、長崎の出島に来たポルトガル人によって日本に持ち込まれた。
 そして、現代、アルケウスは、植物人間だった麻百合の体内へと入り、彼女は魔女として蘇る…。

@「アルケウス」
「半年後に取り壊される予定のリース・マンションには不幸を絵に描いたような三人の女が住んでいた。
 義母との関係がうまくいかず、また、恋人を寝取られた、孤独な女子大生、森下美晴。
 上司との不倫に悩むOL、上野あずさ。
 寝たきりの主人を介護しているらしい老婆、関口。
 ある日、川の工事の際に発破をかけた衝撃で、マンションの井戸水が赤く染まる。
 赤土か何かが水に溶け出したのだろうと考えていたが、以来、美晴が憎い相手を殺す夢を見ると、その通りに死んでいく。
 あずさはそれが原因で自殺し、美晴は、同じ大学で超心理学研究会の志賀峰夫に助けを求める。
 峰夫によると、マンションの建った土地には、江戸時代、魔女が人柱にされていたという。
 美晴と峰夫は魔女の復活を阻止しようとするのだが…」

A「オオカミ・ドリーム」
「短大生の菊村寿寿加は、満月の夜、自分が狼になり、人を襲う夢に見る。
 しかも、夢で見た通りに、犠牲者が出るのであった。
 被害者達に共通するのは、昔、ある不良グループに属していたことであり、彼らは寿寿加の父親を殺害していた。
 生き残りの彼らは、復讐されるのを恐れ、寿寿加の兄、彰を拉致する。
 一方、寿寿加は、自分が最愛の兄との血のつながりがないことを知り、自分の出身地に赴く。
 そこで、彼女は不思議な少女、麻百合と出会う…」

B「スイート・ベイビー」
「サラリーマンの中村俊一と渚。
 渚は半年前、記憶をなくして、海辺をフラフラと歩いていたところを俊一に保護され、後、同棲したのであった。
 彼女の記憶は、ヨットマンの男性、彼女を養女に望んだ夫婦、そして、アリという言葉と、闇の中に光る眼…彼女はその眼がとてつもなく怖い。
 更に、二人に不思議な少女がつきまとう。
 少女は、渚が三人も人を殺していると言い、「彼女がいちばん大切に思っている人のことを思い出させ」ないと大変なことが起きると忠告する。
 少女のせいか、渚は体調を崩すようになり、ある時、高熱を出して、臥せる。
 俊一が医者を連れてくると、そこには、渚と直談判をしようとした、俊一の前の恋人の無惨な死体があった。
 俊一は麻百合にある孤島に連れて来られ、そこで渚の正体を目にすることとなる…」

C「マーメイド・ラブ」
「宇見彦は、ボートの転覆の際、彼の命を救った九鬼織江と婚約をする。
 だが、彼の前に麻百合という少女が現れて以来、彼を助けた女性は、九鬼織江ではないように思い始める。
 織江との婚約を解消し、彼は自身の直感に従って、夜更けの水族館に忍び込む。
 そこで、彼は自分の命を救った女性の正体を知る。
 だが、彼女は、妖魔と化した九鬼一族によって狙われていた…」

D「メロウ・スプリング」
「雪山に母を求める高峰彩子。
 彼女の目的は、母に代わって、雪女となることであった。
 数百年も昔、高峰家の祖先がこの雪山で雪女に襲われる。
 命乞いをする祖先に雪女は、高峰家に娘が産まれたら、母親を雪山に寄こすよう交換条件を出す。
 雪女はこうして新しい身体に憑依して、長い年月を生きながらえてきたのであった。
 だが、彩子は雪女には何故か会えず、ひょんなことから、麻百合と出会う。
 魔女を名乗る麻百合と共に、彩子は雪女の棲家へ向かうが、氷の赤ん坊とその周囲に凍死者達の姿があった。
 麻百合によると、雪女は正常ではないということだが…」

 大ベテラン、井出智香恵先生の隠れた傑作です。
 ファンタジー色が濃いですが、「純愛」が基底にあり、とてもハート・ウォーミングな出来映えで、読後感は意外に爽やかです。
 また、ヘビーな残酷描写もバッチリあって、こういうところにも手を抜かないところは流石の一言。(さすが、わかっていらっしゃる!!)
 芳文社の「LOVINGコミックス」から出てますので、手が伸びないと思いますが、なかなか面白いですよ。

2018年6月12日 ページ作成・執筆

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