白川まり奈「吸血伝」(1973年7月31日発行)



「第1部 伝説編」
 ロンドンに住む医学博士のハンス・クロベールは、吸血鬼について調べるために、南フランスのローベンヌ村を訪ねる。
 この村では吸血鬼の存在が固く信じられており、吸血鬼の犠牲者は胸に杭を打たれ、墓地の地下室に厳重に封じ込められた。
 ハンスは、巨大な塔のそばに建つ城で、グローシエ家の末裔、フレデリックとミレーネの姉弟に出会う。
 グロ―シエ家は村人達からは吸血鬼の血が流れていると考えられ、フレデリックは村人に襲われ、顔と心に深い傷を負っていた。
 また、城の横に建つ塔は、どこにも入り口がなく、不吉なものと考えられていた。
 ハンスとミレーネは次第に惹かれていく中、村では吸血鬼による動物の被害や死者が発生するようになる。
 ミレーネは自分の身体に吸血鬼の血が流れると嘆き、ハンスは共にロンドンに行くよう彼女に勧める。
 だが、ある夜、夢遊状態で森をさまよっていたミレーネは村人達に捕まり、内側にトゲの付いた、呪い封じの仮面をハンマーで顔面に打ち込まれる。(注1)
 胸に杭を打ち込まれる寸前、ハンスとフレデリックによって、ミレーネは救出される。
 ミレーネは顔の目・鼻・口を失いながらも、一命を取り留める。
 しかし、以来、ミレーネは夜な夜な村人を襲い、その血を吸うようになるのだった…。
「第2部 現代編」
 フランシス・ジェレミーは、少年の頃、赤を多用した絵で天才と騒がれるが、精神異常を来たし、長い入院生活の後、ようやく回復する。
 過去の名声を取り戻すため、アトリエを探していた彼は、南フランスの避暑地の浜辺で、謎の塔を目にして、その横にアトリエを構える。
 彼に興味を持った娘達、モーリィやドレルアンによると、この塔は急に出現したり、消えたりするといった噂や、吸血鬼の姫が住んでいたという噂があった。
 気になり、フランシスが塔を覗いてみると、そこにはボウフラだらけの水たまりと、何故か、宇宙飛行士の装備に包まれた死体があった。
 彼は毎夜、奇妙な夢を見ていたが、ある夜、その夢の意味に気付く。
 彼は少年の頃、少女を襲って、血を吸おうとした記憶が蘇える。
 彼は血の味に飢えていたのであった。
 以来、彼は若い娘を殺しては、その血を吸い、死体を塔の中の水たまりに沈めていくのだが…。
「第3部 未来編」
 地球に蔓延する吸血鬼病。
 その病で妻子を失った男性は、気象衛星の修理の任務の際、軌道を変更して、月に降り立つ。
 妻子の後を追おうと死を決意した彼の前に、謎の塔がそびえ立っていた…。

 そのスジでは非常に評価の高い(割には、ろくろく紹介されていない)「吸血伝」シリーズの第一作目です。
 文句なしに傑作と断言できる出来なのですが、今日まで執筆をためらっておりました。
 というのも、「吸血伝」シリーズは四作あり、互いにリンクしているようなのです。
 四作まとめてレビューするのが理想なのですが、これを全部揃えようと思ったら、軽く十万円を超えるんです…。
 いつになるか見当がつかないので、とりあえず、手持ちの分を書くことにしました。
 ただし、全体像が俯瞰できない状態で、あれこれ書いても仕方ありませんので、粗筋の紹介だけに留めます。
 以上、ご了承くださいませ。
 いつの日か「続・吸血伝」と「吸血狩り」が入手できた時に、もっと内容のある話を(できれば)いたしましょう。

・注1
 イタリアのホラー映画監督、マリオ・バーヴァによる傑作「血塗られた墓標」の影響をモロ受けてます。
 吸血鬼映画としては、ベスト・テンに入る出来ですので、ホラー好きは必見です。(モノクロ映像が素晴らしいんです!!)
 バーバラ・スティールも、とってもいいなあ〜。

・備考  ジャンク。本体割れまくり。カバーに痛み。本体の一部、汚れやシミ。
2017年12月6日 ページ作成・執筆

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