小野双葉「魔奇子ちゃん」(2004年12月5日第1刷発行)

 収録作品

・「天使くん」(「ホラーM」1997年3月)
「教布小学校四年の牧千里、(苗字不明)怜、長谷川雪乃は仲良し三人組。
 彼女達のクラスには天使翔(あまつか・しょう)という男子生徒がいた。
 彼は、そのあまりに中性的な可愛らしさ故に「天使くん」と呼ばれる。
 怜は彼を毛嫌いし、いじめ、千里も表面は同調するが、彼を愛しいと思わずにいられない。
 ある日、彼女達は奇妙な老人に声をかけられる。
 老人は面白い遊びを教えると言うが、それは「花いちもんめ」であった。
 三人組に天使くん、老人を加えた五人は二手に分かれて、始める。
 三人組は一緒の組になり、老人と天使くんの組にじゃんけんで勝つ。
 だが、彼女達は天使くんでなく、老人を選び、天使くんが「いらない子」になってしまう。
 すると、老人の口が大きく広がり、天使くんを飲み込む。
 千里達はその場から逃げ、警察が来る騒ぎとなるが、天使くんは家に帰っていた。
 だが、千里は天使くんが変わってしまったことに気づく…」

・「たいじくん」(「ホラーM」1998年11月)
「町内で、妊婦が殺された上、腹を裂かれ、胎児が持ち去られる猟奇事件が連続して起こる。
 その最中、千里のクラスに「山田たいじ」という男児が転入してくる。
 この子は一年生のように小さく、下膨れの顔にいつもニコニコと笑みを浮かべていた。
 だが、クラスの男子、藤瀬、仁村、池戸の三人は、たいじを猟奇殺人の犯人だと決めつける。
 と言うのも、殺人があった晩、彼らはたいじを夜道で見かけ、後をつけると、路地でたいじは姿を消したからであった。
 しかも、路地の行き止まりの向こう側は、水子地蔵が並んでいる墓場であった。
 千里達三人と藤瀬達三人は、現場を見張るため、夜の九時半に墓場に集まる。
 男女ペアになり、分かれて見張るが、今夜は何も起こりそうにないので解散となる。
 千里は、ペアになった仁村にマンションまで送ってもらうのだが…」

・「魔奇子ちゃん」(「ホラーM」1999年7月)
「千里は怜と喧嘩をして、一人ぼっちになる。
 そこで、新しい友達を作ろうと決意。
 とは言え、皆、それぞれグループを作っており、そこに割り込むのは難しい。
 そんな時、下級生らしい女の子が一人でいるのを目にする。
 彼女は「怪魔奇子(カイ・マキコ)」という、小生意気な一年生であったが、うまく友達になってくれる。
 放課後、千里は魔奇子の家を訪れる。
 家は洋風の豪邸で、非常に広く、とてもオシャレなスイーツをご馳走になる。
 おやつの後、マキコと鬼ごっこをすることになるが、捕まったら、死刑にされると言う。
 千里は邸中を逃げ回るのだが…。
 一方、怜は、魔奇子に関する奇妙な噂を聞き、千里の後を追っていた…」

・「ごめんね」(「ホラーM」1999年10月)
「千里達のクラスの安達良子。
 彼女は夏休み、おばの美保の別荘に遊びに行く。
 美保は小説家で、デビュー作がベストセラーになったものの、二作目のプレッシャーに耐えかね、田舎の別荘に引っ込んだのであった。
 何かと監視しているような村人達は面倒臭いが、自然がいっぱいで美保と良子はリフレッシュ。
 特に、神社の奥の立入禁止の池は非常に美しく、美保のお気に入りであった。
 そして、翌日は夏祭り。
 お祭りには「お餅」が搗かれるようなのだが、その意味するところとは…?」

・「暗闇からの告白」(「ホラーM」2001年9月)
「葉菜は泉谷中学校に通う女の子。
 両親は八年前、地下鉄の毒ガス事件に巻き込まれて亡くなり、以来、祖父に育てられる。
 ある日、帰宅すると、家の前に、黒いフードをかぶった、赤い目の巨大な男を目にする。
 不審者と思い、警察を呼ぼうとするが、男はいつの間にかいなくなる。
 祖父にこの話をすると、彼は何かショックを受けたようで、部屋に閉じこもる。
 夕食時、祖父は、明日、自分の八十歳の誕生日に死ぬかもしれないと葉菜に打ち明ける。
 そして、彼は、昭和十八年、ニューギニアの戦地にいた時の話を始める。
 彼の部隊の戦友は次々と飢えと疲労で倒れ、生き残ったのは彼一人。
 彼が死を覚悟した時、奇妙な小屋を目にする。
 そこで出会ったものとは…?」

・「ビビリなホラー漫画家のお話」(描き下ろし)
「毎日のようにオバケの夢を見て、恐怖に震える小学生。
 彼女が思いついた、恐怖から逃れる方法とは…?」

 出来がいいと思うのは「ごめんね」と「暗闇からの告白」。
 「ごめんね」は伝奇ホラー風味で、なかなか怖いのですが、ラストが意味不明で残念!!
 「暗闇からの告白」はよくある「悪魔もの」を巧みに現代社会に絡ませて、上手いと思いました。

2022年6月30日・7月1日 ページ作成・執筆

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