寺田克也・他「マンガ・オブ・ザ・デッド」(2012年12月29日初版第1刷発行)

 収録作品

・寺田克也「AND I LOVE HER」
「今時(?)の女子高生。
 学校は友達や先輩と会えるので好き。
 だが、彼女の家には祖母のゾンビがいた。
 祖母は生前、口うるさくて、いい気味だと思う。
 だけど、そのことが学校で広まって、先輩にふられてしまう。
 しかも、家族は次々とゾンビ化してしまい…」

・鬼ノ仁「DEAD AND FAIL TO DIE.」
「『死なない病気』が発生してから、五年。
 東京は生者と死者の混在する町となっていた。
 死者を抑えるため、警察の「不死病対策室」は日夜、戦う。
 その中で切り札となるのが、左腕のない、セーラー服の女ゾンビ。
 彼女は「不死者」であったが、どういう理由か「不死病」を克服していた。
 しかし、コミュニケーションは取れず、あるのは動くものに対する攻撃性のみであった。
 そして、彼女の弟の伸二だけが彼女を扱えるのだが…」

・広江礼威「ゾンビ・イラストレーション」

・うぐいす祥子「死体と暮らすな子供たち」
「ゾンビにより荒廃した世界。
 ある家に幼い姉弟が両親と共に暮らしていた。
 と言っても、両親はゾンビであった。
 最初は母親がゾンビになったが、殺すことができず、その後、父親も噛まれてしまったのであった。
 ある日、姉弟は外に食料を探しに出るのだが…」

・島田虎之介「ZOMBIE」
「山田市立山田中学校での卒業生同窓会。
 一次会が終わり、新校舎の見学に行く時に、亡くなった人間の話になる。
 会話が進むうちに、野球部のピッチャーだった斎藤という男の話になる。
 彼は急死したのだが、お通夜が済んで、棺を覗いたら、遺体がなかったのだと言う。
 結局、その場は真偽ははっきりしないまま。
 そして、六年六か月後…」

・沙村広明「ゾンビ・イラストレーション」
・外薗昌也「死霊の杜」
「島田弘和は幼い頃から「歩く死者」を見分けることができた。
 そのせいで、大学に在学中は、阿久津洋一という教授の講義をよく聴く。
 阿久津教授の研究テーマは「古代人の葬式の研究」。
 だが、妻を交通事故で亡くしてから、阿久津教授は、古代の神話の中に死者を蘇らせようとした儀式があるのではないかと考えていた。
 ある日、弘和は教授の研究室を訪れ、死者を蘇らせることはやめるよう警告する。
 しかし、彼の警告は、教授の考えの正しさを裏打ちするものであった。
 そして、数年後、彼のもとに阿久津教授から研究ノートが届く。
 それには、生き返らせた妻のことが書かれていた…」

・ヒロモト森一「少年ZOMBIE」
「2017年。
 五年前の世界規模のパンデミックにより、各地では混乱が続いていたが、日本ではどうにか政治機構は保たれていた。
 だが、問題は失業率の高さで、23歳の青年は瀬戸際に追いつめられる。
 先輩から教えられた裏バイト「死体洗い」をしようと、杉並区役所を訪れるが、たらいまわしにされた挙句、「特殊清掃課Z係」に送られる。
 わけのわからないうちに、地下三階に行かされ、ヘリコプターに乗せられるが、これは「死体掃除」の仕事であった。
 アーマーを着せられ、武器を持たされ、ゾンビの徘徊する高円寺に投下される。
 ビビリまくっている彼の前で、両手に日本刀を持った、碧眼の娘、ヒミコがゾンビを斬りまくる。
 彼女の励まされ、彼はゾンビ退治に本腰を入れるのだが…」

・松本次郎「ゾンビ・イラストレーション」

・古泉智浩「ファイト・オブ・ザ・リビング・デッド」
「今日は新潟市体育館でのアマチュア格闘技の試合。
 空手家の野村は友人二人と会場に向かうが、昨日、ヘンな中学生に手を噛まれてから、体調はすこぶる悪い。
 試合前、急に彼は元気になり、試合に臨むのだが…」

・腑貌篤史「有機溶解人間オルガノゲル」
「AD2073。
 アメリカを中心にテロが勃発。
 使用されたBC兵器「オルガノゲル」は世界中に感染者を増やし、全人口の四割が感染者となる。
 感染者は理性を失い、肉体は腐食、そして、感染前の人間を餌としていた。
 その感染者隔離施設5-17地区に、一人の男がやって来る。
 彼は死体売買のブローカーで、ある使命を帯びていた。
 それは、ここに住むオルガ菌開発者のスダ・ガルーシャを見つけ出し、クライアントの「切望」を実行すること。
 彼はレーダーの発信源であるビルへと向かう。
 そこには、スダ・ガルーシャと孫娘、サチ・ガルーシャ(13歳)が住んでいた…」

・伊東美和「21世紀をかけぬけていくゾンビたち」

 「ゾンビ」をテーマにしたアンソロジーです。
 ただし、「ゾンビ」を扱った映画の九割がたが駄作であるように、漫画に関しても、読み応えのある作品は少ないです。
 私の考える理由は二つ。
 @「ゾンビ」の世界観に、自分好みのアイデアを安直にくっつけている。作者は好きなことをやっていて楽しいのかもしれないが、全くリアリティーが感じられない。
 A大風呂敷を広げるだけ広げて、雰囲気だけでごまかし、ラストもうやむや。ホラーは雰囲気が非常に重要なジャンルだけど、手抜きとしか思えない時がある。
 とは言え、まあ、いろんな作品があっていいんじゃないの?という意見もあるとは思いますし、そういう「幅」こそがジャンルを発展させるのに必要でありましょう。
 でも…でもね、「ゾンビ」に関しては、やっぱり大好きなので、その分、どうしても見る目が厳しくなってしまいます。
 というわけで、この単行本の中では、外薗昌也先生「死霊の杜」が、「ゾンビ」(「ペット・セメタリー」も入ってる?)を独自に料理し、作品に仕立て上げていて、一番好感が持てました。
 あと、伊東美和氏による巻末の「ゾンビ論」は行間から愛と本気が溢れまくっていて、流石です。

2023年3月15・19日 ページ作成・執筆

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