青池保子「水の中の赤い家」(2007年4月30日初版発行)
収録作品
・「水の中の赤い家」(「週刊少女フレンド」1973年9月18日号(No.38)初出)
「看護婦のジェニファーは、最愛の婚約者、ジョエル=スコットを交通事故で失う。
悲痛な思いを抱きながらも、彼女は、彼のかたみを手に、川のそばにあるスコット邸を訪れる。
彼女はジョエルの家族を彼のように優しい人々だろうと想像していたが、実際は大違い。
息子の死を信じることができず、凶暴なパラノイアになった母親。
長年、優秀な兄と比較されてきたために、性格がねじ曲がってしまった弟、マルク。
捨子だったのを拾われて、女中として使われている、唖の少女、キャサリン。
身の危険を感じ、ジェニファーは辞去しようとするが、大雨で川が氾濫し、邸から出ることができなくなる。
悪意と狂気に満ちた邸で、ジェニファーの運命は…?」
・「呪いのスペードエース」(「週刊少女フレンド」1974年8月27日号(No.23)初出)
「十五歳の田辺由起子はトランプ占いの得意な少女。
ある日、好奇心から、トランプ占いでは禁忌とされている、自分の運命を占ってみる。
結果は、スペードのエース…意味するところは「死」。
由起子は再度自分の運勢を占うが、またしても、カードはスペードのエースであった。
暗い気持ちで彼女が帰宅していると、いつの間にか人通りの少ない道に来ていた。
一方、由起子の姉、田辺亜紀子も同じくトランプ占いの名人であった。
亜紀子は、社長に外出を控えるよう進言する。
何故なら、社長の運勢を占ったところ、不幸を意味するスペードのエースが出たからであった。
社長は亜紀子の占いを笑い飛ばし、そのカードを車のワイパーに挟み、出かける。
社長の車が人通りのない、見通しの悪い道にさしかかった時、道の真ん中に由起子の姿があった。
スペードのエースのもたらす運命とは…」
「怪奇幻想ホラーマンガ傑作選」(文春文庫)に収録されております。
・「蝶になったモニカ」(「別冊少女フレンド」1971年2月号初出)
「珍しい蝶を追い、道に迷った青年、パスカルは山中に豪華な邸を発見する。
その館には、病床に就く主人、使用人の婦人とその息子、それに、美しく明るい娘、モニカの四人が住んでいた。
モニカはパスカルを歓迎して、大はしゃぎするが、他の人々は皆、彼に冷たく、敵意を隠そうともしない。
館の主人は、娘のモニカは母親と同じ病気のために、世間から離れて暮らしているとパスカルに説明する。
そして、モニカに「へんな感情」を抱かせてはならないと言い、一刻も早く屋敷から出ていくように命令する。
しかし、モニカとパスカルが恋に落ちた時、悲劇の幕が切って落とされる。
モニカの病気とは、愛する者が傷つけられた時、その傷つけた者を殺さずにはいられないというものであった…」
・「吸血鬼」(「週刊少女フレンド」1969年8月26日号(No.35)初出)
「1969年、イギリスの夏。
ギルは、吸血鬼を扱った卒業論文を書くために、ドラキュラ伯爵の屋敷に向かう。
途中、彼は、道の真ん中に倒れている少女を助ける。
アルビノのように白い肌に、大きな目の少女はルウと名乗り、暗い穴の中にいたと話し、太陽光をひどく嫌がる。
放っておくわけにもいかず、車に乗せて、ドラキュラ伯爵の屋敷に行くが、二人は崖から足を滑らせて転落。
気が付くと、十八世紀にタイム・スリップしていた。
これ幸いとギルは十八世紀の人々に吸血鬼について尋ねるが、皆、聞いた事がないと言う。
また、ドラキュラ伯爵本人にも会うが、至って普通の人間であった。
ドラキュラ伯爵の邸に二人が泊まった夜、伯爵の娘、エリザベスが吸血鬼に襲われる。
ギルはエリザベスの血から吸血鬼の原因は細菌であることを突き止めるが、吸血鬼による災禍は瞬く間に村に広がる。
ギルは吸血鬼として村人達に監禁されてしまうのだが…」
SFの要素もあり、この本の中で一番好きな作品です。
ロマン・ポランスキー監督の傑作「吸血鬼」にインスパイアされて描かれた作品とのこと。
また、細菌が原因で吸血鬼になるのは、リチャード・マティスン「地球最後の男」の影響でありましょうか?
ラストのナレーションが勝手に変更(大ポカ!!)されておりますが、ブッキングで再刊された際に訂正されております。
・「竹の花がよぶ」(「別冊少女フレンド」1971年9月号初出)
「ホテル王、岩倉大造は最後の仕事として、竹林を潰し、日本一のホテルを建てようとする。
だが、孫の昭(あきら)は、竹林の素晴らしさに魅了され、ホテル建設に反対する。
昭は、大造の後継者と目されてはいたが、祖父が仕事で、父母を含む多くの人を泣かし、不幸にしたことから、頑なに拒否し続ける。
傷心の昭が竹林を散歩していると、黒髪の美しい娘から祖父の大造と間違えられる。
さやかという名の娘は長い間彼を待っており、数十年前、竹の花が咲く頃、恋人に捨てられて、ここで首を吊った娘について語る。
そして、再び竹の花が咲く時、彼女は彼と再会できるようなのだが…」
講談社の単行本で削除されていたページが復刻されております。
・「ミラ」(「週刊少女フレンド」1965年8月17日号(No.33)初出/原稿紛失のため、印刷物より復刻)
「小説家のトーマスとその妹のポーラは、スリラー小説を書くために、幽霊屋敷を訪れる。
幽霊が出ると言われる部屋は割と綺麗で、とても幽霊が出る雰囲気ではない。
部屋には二枚絵が飾ってあり、一枚は美しい女性の絵で、もう一枚はトーマスと顔も名前も同じ男性の絵であった。
女性の絵を前にした時、トーマスは「ミラ、あいたかった」と話しかけるが、彼はそのことを覚えていない。
夜更け、蝋燭の灯りが風に消えると、ベランダから絵の女性が現れる。
そして、トーマスも、「彼の中にいる、自分でない誰か」が彼女と話をし始める。
ミラとトーマスの関係とは…?」
・「月まつり」(「別冊少女フレンド 65年秋のおたのしみ号」初出/原稿紛失のため、印刷物より復刻)
「今宵は月まつり。
月まつりには、月の女神とその子供が地上に降りてくると伝えられる。
月の女神と子供は美しい心の持ち主にしか見えず、その姿を見た者は幸せになれると言う。
若者達が浮かれ騒ぐ中、ジャンヌの心は晴れない。
孤児の身の上で、女中のジャンヌは、花屋になるために都に旅立ったテオをずっと待ち続けていた。
彼は一年で戻ってくると彼女に約束したが、一年を過ぎても、彼は帰ってこない。
悲しい気分ながらも、ジャンヌは、ゴミ同然の青いリボンを金髪に巻き、月まつりに出かける。
その途中、彼女は不思議な格好をした少女と出会う…」
講談社のコミックロマンミステリーから出た単行本に、単行本未収録の「ミラ」「月まつり」を加えたものです。
青池保子先生の初期の「ファンタジー/ホラー」作品は網羅されているのではないでしょうか?(確認は取ってません。)
作者による作品解説もありますので、いろいろと参考になります。
2017年11月27日 ページ作成・執筆