外薗昌也・原作/高港基資・作画「白異本 弐」(2019年7月20日初版発行)

 ホラー作家の外園が変死する。
 彼は入院中、体重250キロ以上という異常な太り方をしていたが、死後には65キロしかなく、まるで巨大な何かが体から抜け出したようであった。
 外園を担当していた編集者の武内は彼が遺した取材ノートを手に入れる。
 その取材ノートには外園が蒐集した膨大な数の怪談話が記されていた。
 武内は読み進めるうちに…。

・「その8 踏切」
「埼玉県のあるマンション。
 漏電の検査員が一戸一戸訪問して、検査をする。
 ある部屋を訪れると、美しくセクシーな女性が廊下に立っている。
 検査を終え、書類に印鑑をもらおうとすると、部屋の中で踏切の警報音が鳴り響く。
 検査員が訝っていると、女性は電車にとび込み自殺した時の苦しみを静かに語る。
 検査員が再度印鑑を求めると、彼女は奥の部屋に印鑑を取りに行くのだが…」

・「その9 工事現場」
「某県某所に建設されるショッピング・モールの工事現場で働く青年。
 このモールは日本有数の小売りチェーンであるTグループによるものであった。
 青年は生田というベテラン作業員と仲良くなり、いろいろと教わる。
 ある日、生田は青年にTグループの作業現場には「変なこと」が二つあると話す。
 一つはどの現場にもTグループの人間が数人つめていること。
 彼らは毎日来るが、何もせず、詰所で待機しているだけであった。
 そして、もう一つは工事の間、作業員の中から行方不明者が何人か出ること。
 行方不明者は何の前触れもなくいなくなり、後で家族が騒いでも、警察が動くことは全くない。
 その話を訝りながらも、工事は順調に進んでいく。
 ある時、作業員達の間で本社の人間が話題になる。
 すると、年老いた作業員が「祟り」だと言うのだが…」

・「その10 水死体」
「二月。I県の某総合病院に男性が緊急搬送されてくる。
 彼は車ごとダムに転落し引き上げられたのだが、助かる見込みはなかった。
 だが、溺れたにしては、彼の身体は妙にきれいで、水死体に見られる特徴は全く見当たらない。
 蘇生術を始めて一時間以上経っても生命反応はなかったが、彼の弟が来て呼びかけた時、心臓が動き始める。
 自発呼吸がなく脳死している人間にとって、これはありえないことであった。
 そこに彼の妻がやって来るのだが…」

・「その11 河童の手」
「ある田舎の夏休み。
 保と信人が川でザリガニ釣りをしていると、少し離れた岩の上に奇妙なものを見つける。
 それは手の甲あたりで切断された手で、六本指で水掻きがあった。
 保は姉が通う高校の生物教師に見てもらおうと提案し、その夜は信人がその手を入れた水槽を保管する。
 翌日、二人で高校の生物教師に会う予定であったが、信人の家は留守で、結局、信人と会えずじまい。
 二日目に信人の家に行くと、母親がおり、信人は急病で入院したと話す。
 保は彼の家から水槽を回収し、高校の生物教師のもとへ持って行く。
 生物教師はその手を預かるが、その後、連絡はなく、また、信人は学校に戻らないまま、彼の家族は引越しをしてしまう。
 そして、三十年後…」

・「その12 盆の海」
「少女の叔父は海辺の町に住んでおり、漁師であった。
 彼女が遊びに行くと、叔父は漁船で近場の海に連れて行ってくれ、彼女はそれをとても楽しみにする。
 しかし、夏休み、お盆の時期に行くと、叔父は決して船を出してはくれなかった。
 浜辺の見える高台で少女がいじけていると、叔父が話しかけてくる。
 そして、叔父が小学四年生の頃に体験したことを話すのだが…」

・「その13 二年越し怪談・前編」
「あるOLは会社へ車で通勤していた。
 通勤途中に大きなお屋敷があり、その前には果樹園があった。
 ある朝、彼女が果樹園の前を通りがかると、その中に一人の老人が座り込んでいるのが目に入る。
 以来、彼女は毎日、会社の行き帰りにその老人を同じ場所で見かける。
 その老人は彼女にしか見えていなかったが、それから半月後…」

・「その14 二年越し怪談・後編」
「T県B市の特別養護老人ホームで働く男性。
 ここはきつい職場で、離職者が多く、先月、一人の職員が物置で首を吊る。
 そんなある日、老人たちがニコニコしながら輪になって何もない空間を覗き込んでいる。
 トミコという老婆に尋ねると、高山と津崎が戻って来たと話す。
 高山と津崎という老人は徘徊したまま、行方不明になっていた。
 また、園長が、首吊りした職員がおかしくなった頃と同時に様子がおかしくなる。
 園長は何故か窓の近くに近寄ろうとはせず、怯えているようであった。
 夜勤の夜、男性が出勤しようとした時、二人の男から声をかけれられる。
 二人は刑事で…」

 個人的には、不気味で不条理な「工事現場」「河童の手」が好みです。
 「水死体」はよく理解できませんでした。(結局、男性は自殺したの?子供が二人いるなら、離婚するのが普通だと思うけど…。)

2024年1月3日 ページ作成・執筆

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