手塚プロ「蜘蛛」(1978年6月1日初版発行)

 怪奇小説の古典的な短編を三つ漫画化したものです。

・ハンス・エーベルス「蜘蛛」(「怪奇小説傑作集D」(創元推理文庫)収録)
・ギイ・ド・モーパッサン「呪いの手」(「怪奇小説傑作集C」(創元推理文庫)に「手」のタイトルで収録)
・W・W・ジェイコブス「猿の手」(「怪奇小説傑作集@」(創元推理文庫)収録)

 どれも有名な作品ですので、読まれた方も多いでしょうし、未読の方には是非とも目を通して欲しいので、粗筋紹介は割愛いたします。(どれも短編で、大して時間はとりません。)
 ただ、「呪いの手」はかなりアレンジしておりまして、ピアニストがライバルの手を切り取るという内容になっております。
 もしかしたら、楳図かずお先生の「ピアニストの手を移植された少女の話」(タイトルど忘れ)の影響があるかもしれません。
 これはこれで面白いです。

 それにしても、モーパッサン「手」とジェイコブス「猿の手」は何度も漫画化されておりますが、エーベルス「蜘蛛」の漫画はかなり珍しいかもしれません。
 江戸川乱歩に影響を与えて、「目羅博士」を書かせたほど、有名な作品なのですが、やはり、漫画にしにくかった内容なのかも…。
 漫画化に際しては、バリバリで「蜘蛛女」ものにアレンジされております。

 ちなみに、ハンス・ハインツ・エーヴェルスについて知りたい方は、H・H・エーヴェルス「プラークの大学生」(創元推理文庫/1985年9月27日初版)をどうぞ。(当時の「活動写真」についても知ることもできます。)
 あと、印象に残っているものは「スターニスラワ・ダスプの遺言」という短編。(「現代ドイツ幻想短編集」(国書刊行会/1975年9月15日初版第一刷発行)収録)(注1)
 他にももっと読みたいのですが、エーヴェルスの作品集、なかなか手に入りにくいです。

 最後に、この作品の作者は「手塚プロ」となっておりますが、実際は手塚プロ所属していた漫画家、井上大助先生によるものです。
 井上大助先生は主に児童向けの漫画で活躍されている御方でありますが、子供向けとは言い難いグロ・残酷描写を盛り込むことで知られております。
 この単行本でもいい仕事してますよ。

・注1
 この本に収録されている、カール・ハンス・シュトローブル「ファン・セラノの手記」が非常に面白かった記憶があります。
 ドイツ版「瓶詰の地獄」なのでしょうか?(ものすご〜くテキト〜言ってますので、御注意ください。)
 シュトローブルの作品集も読んでみたいですが、エーヴェルスよりももっと手に入りにくい…。

2017年1月11日 ページ作成・執筆

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