曽根まさこ「ぼくを食事につれてって」(1992年7月25日初版第1刷発行)

 収録作品

・「ぼくを食事につれてって」(90年「アップルミステリー」No.6初出掲載)
「中江将は、18歳のW大学生。  だが、その正体は、遠い昔から人間の血を糧としてきた、吸血族の一人であった。
 彼は、一族でも厄介者のアズ・ユナ・セイと一年間、共同生活することになる。
 セイは性格が特に悪いというわけではないのだが、血を吸った後で、その血の人間の影響を過剰に受けるという特殊体質があった。
 アメリカから日本に来たばかりのセイを将は食事のために、夜の町に連れ出すのだが…」

・「帰り道」(88年「ホラーパーティ」Vol.8初出掲載)
「女子高生の朱理は「家に帰りたい」という感情にたびたび駆られる。
 と言っても、家はちゃんとあり、別にもらいっ子だったわけではない。
 にも関わらず、家にいても、「本当の家」とは思えず、不安に駆られる時がある。
 両親とは、母親が少し浮世離れしているものの、関係に問題はなく、円満。
 男友達は彼女の話を聞いて、それは「前世の記憶」ではないか、と推測する。
 その夜、朱理は、両親が奇怪なモンスターになっていた夢を見る。
 クラスメート達に勧められ、朱理はそのモンスターを思い出そうとするのだが…」

・「いつもとちがう道」(89年「ホラーパーティ」Vol.12初出掲載)
「小早内久子は学校帰り、いつもと違う道を選び、裏通りに入る。
 そのうちに大通りに出ると高をくくっていたが、道はやたら入れ組んで、町名も聞いた事がない。
 人に道を尋ねても、でたらめだったり、どうのこうの理由を付けて、はっきりしたことを教えてくれない。
 日は暮れ、お腹がすいても、久子に手を貸してくれる人はいない。
 久子はこの町から脱出できるのであろうか…?」

・「アクマで鏡売り」(91年「アップルミステリー」No.10初出掲載)
「とある街角の鏡専門店。
 そこに「前に立った人間の真実の姿をうつすという世にもおそろしい鏡」があった。
 噂を聞いて、いろんな人が店を訪れ、その鏡の前に立つのだが…」

・「役たたずの魔女」(91年「アップルミステリー」No.11初出掲載)
「冬の公園のベンチで、マーコは友人に自分は魔女かもしれないと告白する。
 自分の周辺に限り、願ったことが必ず叶うというのだ。
 半信半疑の友人が、マーコを試すために、様々な要求を突き付けると…」

・「忘れ髪の姫君」(84年「キャロル(講談社)」5月号初出掲載)
「昔、花と緑に包まれた、小さな王国。
 お城には、王様とお妃様、それと、愛らしいお姫様が住んでいた。
 お姫様の名前は、イレナ=ベルセリナ。
 だけども、皆は彼女を「わすれ髪の姫さま」と呼んでいた。
 その名の由来は、彼女の髪は絹よりも細い、美しい金髪で、その髪を触る人は皆、憂鬱を忘れ、幸せになるからであった。
 噂を聞き、国中から人が姫の髪を触りにやって来るが、人々に髪を触らせるほど、姫は憂鬱さを募らせていく。
 姫は笑顔を失い、心の中の暗く澱んだ霧は如何様にも晴れない。
 お城の森で、姫が、髪を触らせるのを断ろうと考えた時、どこからか笛の音が聞こえてくる。
 その綺麗な笛の音は姫の暗澹とした心を晴らし、姫が音のもとに行くと、旅の楽師隊の見習い、リーノという少年が笛を奏でていた。
 それから毎日、昼下がりになると、姫は彼の笛を聴いて過ごすようになるが…」

 表題作よりも小品の方が個人的には面白かったです。(表題作は続き物であったら…と残念。)
 特に、「いつもとちがう道」は、方向音痴な私にとっては、かなりリアルな作品でありました。
 人を喰ったようなラストも味わい深いです。

2017年8月22日 ページ作成・執筆

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