成毛厚子「血洗坂にて」(1994年8月17日第1刷発行)

 収録作品

・「血洗坂にて」(1992年「Sakura Mystery」Vol.20)
「遅筆な小説家、川添隆一を担当する編集者、仁科幸子。
 締め切り間近になっても、行方がわからず、焦っているところに、川添から幸子に手紙が来る。
 その手紙にはフィルムが入っていたが、撮った場所が暗かったのか、何も写っていない。
 川添の居場所がわかったので、幸子は神奈川県K市の山吹楼に向かう。
 が、川添は昨日から散歩に出たきり、帰ってこないという。
 川添の部屋を見てみると、「血洗坂にてお待ち申します」という女文字で書かれた紙が見つかる。
 幸子は血洗坂に行ってみるが、そこで赤い帯を左手首に結びつけた着物姿の女性の姿を目撃。
 そして、幸子は奇怪な事件に巻き込まれることになる…」

・「胎動」(1992年「Sakura Mystery」Vol.15)
「家庭で居場所のないサラリーマン。
 以前、単身赴任をしていた広島に出張することになるが、広島にははる江と言う、不倫をしていた女性がいた。
 束縛することなく、一緒にいると心から安らげる、母親のような女性。
 男は、はる江のやっている飲み屋の前にやって来るが、その二階には子供ものの服が干されていた。
 ちょっとしたきっかけで、男ははる江と再会、そこで飲み、夜、泊まることになる。
 そこで、彼は彼女の「子供たち」に会うことになるのだが…」

・「一家に一缶」(1991年「Sakura Mystery」Vol.10)
「女性三人で温泉旅行。
 U子以外の二人は子供持ちの主婦で、U子は彼女たちの女を忘れた「だらしなさ」が鼻について仕方がない。
 夕食の席で、U子は二人からある薬品の話を聞く。
 それは愛人を駆除するという「愛人コロリ」という薬品で…」

・「百花繚乱」(1993年「Sakura Mystery」Vol.25)
「藤森あずさは、医者である松永司郎と結婚を目前にしていた。
 しかし、司郎が伊豆熱川で腹部を刺され、入院するという事件が起きる。
 あずさは大至急伊豆熱川の病院を訪ねるが、怪我は大したことはないのに、司郎は昏睡状態のままだった。
 あずさを偽って、伊豆に行っていたこと、財布の中の大金、司郎の近くで溺死していた男…司郎には秘密があるらしい。
 そして、病院や、あずさが宿泊している旅館で見かける謎の子連れの女。
 この美郷(みさと)という女が全ての謎を解く鍵のようなのだが…。」

・「不幸な女」(1992年「Sakura Mystery」Vol.12)
「平凡なサラリーマンの青年、池沢マモル。
 彼の部屋に据え付けたファックスから、「信ちゃん」に向けた間違いファックスが毎日届く。
 最初は迷惑に感じるが、ファックスの内容からすると、送信者の女性はどこかに監禁されていて、折を見て、送信しているらしい。
 内容は徐々に身の危険を訴えるものに変わっていき、マモルは彼女を救い出そうとするのだが…」

・「嫁のつとめ」(1992年「Sakura Mystery」Vol.21)
「道子は、旦那側のボケた祖母を、少量の薬物で徐々に弱らして、ようやく永眠させたところ。
 これから、自分の幸せが始まると思っていたら、死んだ祖母が「道子さんのそばが一番」とあの世から帰ってきた…」

 個人的に、一番好きなのは、ブラック・ユーモア溢れる小品「嫁のつとめ」です。
 同じような作品に「一家に一缶」がありますが、ちとオチが弱いかも…。

平成27年6月22・23日 ページ作成・執筆

その他の出版社・リストに戻る

メインページに戻る