手塚治虫「日本発狂」(1987年11月1日初版/1989年3月30日二版発行)
・「第1章 深夜の行進」
「北村市郎(イッチ)は昼はパン屋で働き、夜は定時制高校に通う青年。
ある夜の帰り道、彼は大勢の半透明な人々が道路を行進しているのを目にする。
彼は週刊珍重の記者、本田に助けを求め、本田は人々の姿は視えなかったものの、大勢のざわめきを耳にする。
更に、イッチは電車のホームで美しい少女を見かけるが、彼女は幽霊で、彼の部屋に現れる。
翌日、彼は本田に幽霊のことを相談するが、本田はイッチの勤めるパン屋に向かう途中、交通事故で亡くなる。
イッチが慌てて警察病院に行くと、遺体安置所にあの少女の幽霊がいた…」
・「第2章 異次元通信局」
「イッチを通し、本田の霊はあの世について報告を行う。
あの世では世界が三つに分かれて、三十年も戦争をしており、兵士が足りないため、この世からどんどん連れてきていた。
本田からの霊界通信は驚くことばかりだが、それがイッチに危険をもたらすこととなる。
イッチは「死神」たちに狙われ、遂に彼の霊体はUFOによって霊界へと連れ去られてしまう…」
・「第3章 キャンプにて」
「霊界でイッチは「死神」の本部に連れて来られ、尋問を受ける。
実は「死神」たちの正体は独裁制を敷く政府の秘密警察であった。
その時、本部は反政府軍に襲撃され、イッチは反政府軍に助けられる。
彼は「死神」に連行された少女を救うために、反政府軍に手引きされ、強制収容所のキャンプに潜入する。
そこで彼はようやく少女と再会するのだが…」
・「第4章 日本発狂す!」(注1)
「イッチのお陰で、七千八百万人の幽霊がキャンプから脱出する。
政府軍からも革命軍からも見放され、難民となった彼らが亡命先として選んだのは日本であった…」
(「高一コース」1974年4月号〜1975年3月号)
手塚治虫先生の「流行りもの好き」は有名ですが、この作品は恐らく、当時の心霊ブームに触発されたものと思います。
ただし、「霊界」の解釈があまりに独特で、個人的には「奇作」としか思えない内容でした。
手塚治虫先生は戦前の軍国主義を体験しておりますので、「戦争反対」「全体主義反対」という考えをヤングに訴えたかったのかもしれませんが、オカルト漫画に盛り込むには無理があったように思います。
ぶっちゃけ、生きてる間も戦争で、死んでもあの世で戦争だったら、気の休まる暇がありませんがな。
でも、あの世に対するこういういびつなイマジネーションって、黒田みのる作品にも共通することですが、妙に心惹かれるところがあります。
霊能力者がデカい面をする心霊マンガに飽きた時にでも読んでみたら如何でしょうか?
・注1
そう言えば、懐かしのSF作家、フレデリック・ブラウンに「発狂した宇宙」という筒井康隆先生・お気に入りの作品がありました。
同じブラウンの「火星人ゴーホーム」は「第4章 日本発狂す!」に影響を与えているような気が個人的にしております。
2025年12月18・19日 ページ作成・執筆