いけうち誠一「恐怖の叫び」(1987年2月10日初版発行)

 収録作品

・「呪いのかつら」
「映画を観た帰りの夜道、香川とも子は、強盗と遭遇する。
 彼は、頭のおかしい老婆からかつらを奪い取ってきたところで、とも子の前にかつらを投げ捨てて逃走。
 彼女は、老婆にかつらを返しそびれたまま、帰宅する。
 家で試しにかつらをかぶり、鏡を覗くと、とても自分が美しく見える。
 だが、彼女の背後には、左顔面が焼けただれた、和服の少女の姿も映る。
 このかつらがきっかけで、とも子は、憧れの大原一彦と仲が良くなる。
 しかし、ある店で、和服の少女のポスターを見た時から、かつらが取れなくなり、とも子の顔面が爛れ始める。
 このかつらに込められた呪いとは…?」

・「檻」(1970年「週刊少年チャンピオン」33・34号)
「身寄りをなくした菊地雅子(18歳)は、大学を終えるまで、おじの屋敷に住むことになる。
 その屋敷は、高台にある、大きな西洋館であった。
 住人は、おばの再婚相手である、大学の研究室に勤める、おじ。
 踊りの師匠をして、家をしばしば留守にする、おば。
 そして、蛇にような目つきをした、陰湿で残忍な、いとこのミツオ(7歳)。
 この「檻」のような息詰まる屋敷で、雅子は、おじと不倫の関係となる。
 次々と奇怪な事実が明るみになる中で、雅子は、ミツオの命を左右する場面に遭遇するのだが…」

・「霊界のささやき」
「父親の急死を機に、水島一家(母親、姉の京子、弟の宏)はあるアパートに引っ越す。
 その部屋では一年前、若い女性が、食事の支度をすました後、忽然と消えていた。
 学校からの帰り、アパートの周囲をうろつく、奇妙な男から「ゆうれいが…でないかね」と呟かれる。
 また、アパートに越して以来、彼女の両手の指先が、原因不明のまま、膿み始める。
 そして、家族写真に写った、謎の女性の姿。
 夜、その女性が窓の外に現れ、京子を、朽ちた物置小屋へと誘うのだが…」

・「小ちゃくなあれ」(1970年「別冊少年マガジン」4月号)
「ある日、留守番をしていた、黒水つよし少年は、空き巣に出くわす。
 空き巣に暴力を振るわれ、つよしが「小ちゃくなあれ」と祈ると、空き巣は、10センチぐらいのサイズに縮んでしまう。
 以来、つよしは、いじめっ子やムカついた人々を超能力で小さくしては、残酷な遊びに耽るようになる…」

 キクタヒロシ氏(「昭和の怖い漫画」)をはじめ、多くの怪奇マンガ・ファンに絶賛される、傑作単行本です。
 皆が口をそろえて言うように、目玉は何と言っても、異常心理ドラマ「檻」と、世紀のトラウマ大傑作「小ちゃくなあれ」です!(注1)
 ごちゃごちゃ言っても詮無い事、とりあえず「何が何でも読んで!!」としか言いようがありません。
 今はプレミア価格となってしまった本ですので、電子書籍でも構いませんから、復刻が切に望まれます。

・注1
 個人的には、「霊界のささやき」の、地中から脱出しようとする描写の凄味も特筆に値すると思います。

2019年6月15日 ページ作成・執筆

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