北杜太郎「腐人の掟」(1963年4月27日発行/170円)

「会津若松藩の剣術指南役を勤める小栗源内は、家老の赤松佐渡と争いになり、これを斬って、蝦夷へ逐電。
 赤松佐渡の嫡男、幻之丞は、四人の共を得て、蝦夷の地を踏む。
 ペテガリ岳に源内が潜んでいるという情報を得て、幻之丞の一行は深山に分け入るが、それは源内の知るところとなる。
 源内は、返り討ちにするべく、仲間割れを企て、一行のうち、欲深な鬼頭四十郎と大場金吾を黄金で仲間に引き入れる。
 しかし、幻之丞達を待ち伏せに向かう途中、三人は奇怪な野獣に襲われる。
 源内は喉を喰いちぎられ死亡。鬼頭と大場も噛み傷を負う。
 すると、野獣の毒のため、鬼頭と大場は怪物となってしまうのであった。
 源内の死体を見つけた幻之丞の一行は、鬼頭と大場をあきらめ、帰途に就くが、途中、立ち寄ったアイヌの村で檻の中に囚われている、二匹の怪物の姿を目にする。
 怪物の衣服が鬼頭と大場の物であったので、酋長に事情を聞くと、野獣オマリに噛まれると、身体が腐り、二日と経たぬうちに腐死してしまうのだと言う。
 もとの姿に戻すには、キンカの実を食べるしかないが、この実は今や絶滅寸前であり、鬼頭と大場は助かりようがない。
 が、その夜、鬼頭と大場はキンカの実を奪って、檻から逃げ出し、二度と見つからなかった。
 そのまま、藩に戻った幻之丞達であったが、死んだと思われていた鬼頭と大場もこっそり町に戻ってくる。
 怪物の血に侵され、理性を失った二人は、幻之丞達を皆殺しにすべく、まず一行の八田甚内を惨殺。
 しかし、キンカの実が不足し始め、怪物になった大場が町で暴れて、大騒動となる。
 一方、一行のまとめ役であった中田惣右エ門は、酋長からもらったキンカの実を庭で栽培していた…」

 北杜太郎先生の好きな「奇怪な野獣に噛まれて、怪物になるが、ある実を食べると、元通り」というストーリーです。
 宏文堂の「野獣伝」も同じテーマですが、こちらの方が会津若松の城下町で怪物が大暴れしますので、こちらの方が面白いかもしれません。
 最後は、子供をさらって、天守閣に登るという「定番」で決めております。
 残酷描写もあまり多い方ではないのですが、子供のバラバラ死体等、見どころはあります。
 ただ、ラストが少女マンガちっくにリリカルなのが何とも…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。小口研磨。読み癖あり。小欠損、コマにかかる切れ、幾つもあり。全体的にシミや汚れ多し。pp15・16、下部に縦6センチ横3センチ程度の欠損。pp50・51、pp64・65、何かが挟まって、剥げた痕あり。pp123・124、コマに小さな穴の欠損あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

平成27年12月16日 ページ作成・執筆

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