北杜太郎「魔魂の壷」(1964年1月13日発行/190円)

「初期の江戸。
 謎の行方不明事件が頻発する。  町方同心、柴右門は、容疑者として挙がった、金貸しのお幻婆を見張る。
 右門が監視をしていると、ある夜、お幻は通りがかった町人を催眠術で操り、自分の家へ連れて入る。
 その家には隠し部屋があり、右門が押し入ると、町人に今まさに危害が加えられようとしているところであった。
 右門はお幻を縛り上げるが、お幻は部屋にあった壺のことが心配でならない様子。
 その壺は右門が預かることになる。
 その後の調べで、お幻の家の床下からは血を抜かれた死体がごろごろ出てきて、今までの行方不明事件はお幻の仕業だったことが明らかになる。
 翌日、牢中のお幻に呼ばれた右門は、お幻から奇妙な話を聞かされる。
 お幻が人を殺したのは、あの壺に血を飲ませるためであり、壺が死んでしまったら、自分は呪われると話す。
 実は、お幻は、甲斐の武田勝頼の隠し子なのであった。
 双子であったため、不浄の子として殺される運命であったのだが、その命令を受けた柿田藤エ門は一人を遠くの地方の知人に預け、もう一人を妹の子として育てることとする。
 しかし、どこからともなく、藤エ門が殿の命令に背いたという噂が広がり、身の証を立てるために、五日の間に、自分の血を一升取り、それを泥に混ぜて、壺をつくるように言われる。
 藤エ門は指示通りに壺をつくり上げるが、完成後、出血多量がもとで、衰弱死してしまう。
 お幻は長じて、藤エ門の妹から「命の恩人の魂」と壺を譲り受け、大事にしていたのだが、三年前から壺が血を欲しがり始め、それが連続殺人の理由だったのであった。
 右門は半信半疑で帰宅するが、夜、不気味な男が寝床に現れ、血をよこせと襲いかかる。
 右門は男に斬りつけるが、実際に斬ったのは壺であり、両断された壺はどろどろに溶け、消えてしまう。
 そして、その中から皮包みが出てくるのだが…」

 メチャクチャな話です。
 呪われた、血を吸う壷の話かと思ったら、急に武田家の隠し財産の話へと急にシフトするのであります。
 ラストも、主人公を自然災害であっさり殺して、ジ・エンド。
 テキト〜過ぎる〜…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。後の遊び紙に貸本屋のスタンプあり。前後の袖をセロハンテープで補修、それが変色し、遊び紙に染みている。(あまり読まれた形跡がないなあ…)

2016年1月2日 ページ作成・執筆

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