坂上泰夫「武蔵怪夢録」(1962年3月25日発行/170円)
「六十歳の宮本武蔵は苦悩のうちにあった。
兵法の道は進めば進むほど、無明の闇が深まるばかり。
それにもかかわらず、武蔵は神仏には頼らず、この闇の中に「まことの剣(破邪の剣)」を探し求め続けていた。
更に、今まで倒してきた六十余人の武芸者の霊が彼を責め苛む。
彼は胃病に倒れ、床に臥すが、その夜、奇妙な夢を見る。
夢の中、彼が荒野を進むと、十三歳の時の最初の相手、有馬喜兵エが現わる。
二人は対決するが、武蔵の剣が有馬喜兵エの手から剣を払うと、天から光が降り注ぎ、喜兵エは成仏したのであった。
武蔵は自分の剣によって殺生地獄から今まで殺した者達を救うことを決意する。
こうして、彼は夜な夜な夢の中で自分の対戦相手と出会い、彼らを成仏させていく。
だが、それは彼自身が自分の寿命を縮め、殺生地獄へと近づくことになるのであった。
しかも、夜ごと、武蔵が血刀を下げて城下を歩くとの噂が立つ。
噂を聞き、武蔵は霊岩洞にこもり、五輪書の執筆に取り掛かるのだが…」
宮本武蔵をテーマにした、不思議な作品です。
恐らくは原作があるのでしょうが、武蔵が今まで斬った相手を成仏させる描写がどこかシュール。
坂上泰夫先生なので絵はイマイチですが、ストーリーはわかりやすく、面白いので、坂上作品の中では良作ではないでしょうか?
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2023年11月25日 ページ作成・執筆