湧井和夫「怨霊譚」(160円/1961年12月25日発行)



「佐倉城。
 江戸滞在中の殿に代わり、城を取り仕切ったのは家老、堀田玄蕃(ほった・げんば)であった。
 玄蕃は、百姓達に重税を課し、厳しく税を取り立てる。
 税を払えぬ者は、年寄りや病人であろうとも情け容赦なく拷問にかけ、生まれ育った土地を捨て、他の地に逃げる者も多数いた。
 百姓達の名代、木村宗吾は百姓達の窮状を見かね、玄蕃に幾度も直訴するが、全く聞く耳持たない。
 ある日、役人が偽の米升を使っていたことが明らかになり、堪忍袋の緒を切らした百姓達は一揆を組織。
 一瞬即発のところを、木村宗吾は農民達を諭し、解散させる。
 家老に相談したのでは埒があかないと考えた宗吾は、江戸に出向き、殿様に嘆願状を届け出る。
 その訴えが聞き入れられなかった時、宗吾は、自分の命を賭けて、当時の大老へ直訴。
 追われ人となった宗吾は、故郷の家族と最期の面会を果たした後、最後の手段として、将軍家へ訴え出る。
 直訴は成功するが、当時の法では、宗吾は、家族もろとも処刑されることとなる。
 処刑される寸前、宗吾は怨念となり、堀田玄蕃を祟る旨、固く誓う。
 そして、宗吾とその家族の怨霊が、佐倉城の玄蕃や殿の前に姿を現わすのだった…」

 伝説上の義民「佐倉惣五郎」を題材にした作品です。
 以前に採り上げた、久呂田まさみ「血と風」も同じ人物を題材にしており、有名な人のようです。
 ただ、私はこの件に関しましては無知同然ですので、詳しいことがお知りになりたい方は、ウィキペディアにて「佐倉惣五郎」の記事をお読みください。

 湧井和夫先生のこの作品は、恐らく、講談本に沿って、描かれているのでありましょう。
 そのためか、非常にストレートかつ読みやすい内容で、個人的には、かなり楽しめました。
 ちなみに、見せ場は、「血と風」と同じく、木村宗吾一家の処刑シーンです。(なかなかスプラッターです。)
 肝心の怨霊による復讐シーンは、処刑された姿で、相変わらず訴状を突き付けるだけで、思ったより地味なのが残念。

・備考
 カバーちょっと痛みと前側の袖に折れあり。後ろの遊び紙に鉛筆での書き込みあり。前後の遊び紙にセロハンテープの跡あり。

2017年7月5日 ページ作成・執筆

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