北杜太郎「白鬼屋敷」(1964年6月30日発行/200円)

「長者夫婦に仕える使用人のお蒔(まき)は村はずれのお地蔵様を篤く信仰していた。
 ある日、お地蔵さまから丘の一本杉の根本に捨子があることを告げられる。
 お蒔がそこへ行くと、確かに捨子があったが、その子には角と牙が生えた鬼っ子であった。
 しかし、お蒔は、お地蔵様が授けてくれたものと信じ、この子を育てることを決心する。
 お蒔はこの子に鬼吉という名をつけ、それは大切にして育てた。
 十二年後、鬼吉は立派な少年となったが、容貌はまさしく鬼そのもの。
 容貌だけでなく、性格も凶暴かつひねくれて、村人からは鬼っ子と呼ばれ、忌み嫌われる。
 鬼吉が村人の家畜を盗んで、貪り喰ってしまうのが、度重なり、村人は長者のもとに訴え出る。
 長者の取り成しによって、鬼吉はどうにか許されるが、悪いことを二度としないと誓うことを断固拒否。
 お蒔にも責められ、鬼吉は家を飛び出してしまう。
 山に入って、独りで暮らそうと道を歩いていた時に、鬼吉に恨みがある村人が猟銃で鬼吉を狙う。
 弾丸は急所を外れ、村人ともみ合ううちに、鬼吉は村人の喉笛を食いちぎる。
 遂に村全体から命を狙われる身となった鬼吉は、おみねという少女をさらって、棒岩という天に細長く伸びている岩の上に隠れるのだが…」

 ジャケットが素晴らしいので、内容を期待してしまいますが…グダグダです。
 ストーリーが行き当たりばったりもいいとこです。
 ネタバレになりますが、お地蔵様の授かりっ子ということで最後に改心でもするのか、と思っていたら、そんなことは全くなく、おみねと争ううちにあえなく溺死してしまうという、テキト〜な終わり方をしてしまい、釈然としない感のみ残ります。
 北杜太郎先生は太平洋文庫では恐らく、一月に一冊ぐらいのペースで作品を発表しておりましたので、明らかに描きとばしたオーラがムンムン漂っております。
 相変わらず達者な描線は流石ですが、内容は支離滅裂で、観賞はジャケットのみに止めておいた方が無難でありましょう。 

・備考
 ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。後の遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。上の小口に「14」のスタンプあり。(何かあまり読まれた形跡がない…)

平成27年12月9日 ページ作成・執筆

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