曽祢まさこ「呪い髪」(1991年8月4日初版発行)

 収録作品 ・「呪い髪」(「ホラーハウス 88年11月号」)
「くせっ毛で、ボーイッシュな高城美紀は、自己嫌悪気味な女子高生。
 だが、同じクラスの、長い黒髪がよく似合う藤村真由子に、幼馴染で、ボーイフレンドの司を奪われる。
 更に、そのことをネタに陰口をたたかれ、美紀は真由子に憎悪を燃やす。
 ふとしたことから、真由子の黒髪を一本手に入れた美紀は、あることを思いつく。
 それは呪いの人形にその黒髪を入れて、人形に日に一本針を刺していくというものであった。
 そして、針が十三本に達した時…」
 最後のコマが意外と怖かったりします。斯様なオチはまさに「曽祢まさこ節」です。

・「薔薇の棺」(「ホラーハウス 1989年2月号」)
「幼少の頃より、茜(あかね)は妹の紫(ゆかり)を心から大切に思い、絶えず目を配る。
 というのも、紫には一つだけ困った癖があり、それは無意識のうちに、血を求めて、飲んでしまうことであった。
 吸血鬼のような癖を直させようとするものの、どうにも治らない。
 また、衝動を抑えようとする、紫の努力も決して実らなかった。
 時は流れ、紫が15歳になった時、遂に…」

・「惨劇の夜」(「ホラーハウス 1989年6月号」)
「宮原千尋、伊藤鈴子、樋口萌の三人はある私立の女学院の仲良しグループ。
 両親が留守ということで、宮原千尋の屋敷に鈴子と萌が泊まりに来る。
 邪魔するものはなく、三人は楽しく過ごすが、萌は「死んだ」みのりのことを思い出してならない。
 その不吉な予感を証明するかのように、その夜、屋敷で惨劇の幕が開くこととなる…」
 派手ではありませんが、B級ホラーの要素が盛り込まれておりまして、嬉しい限りです!!
 こめかみにアイスピックは「13日の金曜日 part2」でしたかね。
(長い間、観返していないので、記憶が定かでありません。「part 3」の顔面挟み潰しを再見したいものです。)

・「春を夢見て」(「ホラーハウス 1990年1月号」)
「雪の吹き荒れる日々が続く冬。
 屋敷で住む一族は春を来るのをひたすら待ちわびる。
 しかし、屋敷の周囲には危険な「野良犬」がいっぱいで、武装した彼らは警戒を怠らない。
 彼らは無事に春を迎えることができるのであろうか…?」

・「少女たちは午後…」('77「なかよし7月号増刊」)
「アルベールは元気いっぱいの少年。
 その他の少年達と同じく、もちろん、がさつで乱暴者。
 ある日、アルベールは、妹のリセットとその友達の少女達が何をしているのか、ふと疑問に思う。
 妹がサロンと呼んでいる、西の部屋で少女達の行動を確かめようと、アルベールは部屋のクローゼットに忍び込むのだが…」
 これは怖いです。名作です。
 個人的な感想なのですが、このマンガに出てくるママさんがいいんだなあ〜、と一人、ここで熱く宣言します。

・「ファニー=ベルの歌」('76「なかよし6月号増刊」)
「夏季休暇で大学から故郷の村へ帰る青年、ジョイ。
 彼は、つまらぬ喧嘩から疎遠になってしまた恋人、ファニー=ベルとよりを戻すつもりでいた。
 しかし、ファニー=ベルは流れ者と男と一緒に失踪していた。
 失意と後悔のどん底に落ちるジョイだが、村の男の子が、ジョイがファニー=ベルのためにつくった歌を口ずさんでいるのを耳にする。
 ジョイが男の子を問い質して、歌の出所を知るのだが…」
 曽祢まさこ先生によると、レイ・ブラッドベリの作品をもとにしたそうです。(タイトルは忘れてしまったとのこと。)
 私も云十年前の学生時代の頃、何冊か読んだものでありました。
 本棚の奥で眠っている単行本を、近いうちに、再読したいものであります。(注1)

 「ちょっとひとことのコーナー」(p149)にて、曽祢まさこ先生は「ロマンチックでシビアでこわい話を書きたい」とおっしゃってます。
 これを読んだ時、はたと膝を打ちました。
 そうなんですよ、この「シビア」さが魅力なのであります。
 「シビア」になろうとすれば、人間の「善意」の裏側にあるものを暴き出さなくてはなりません。そこにあるのは「不毛」の一言のみ。
 それでいて、「ロマンチック」という相反する要素と、想像力に訴えかける「こわい」という要素も盛り込もうというのですから、なかなか大変だったのではないでしょうか?
 ただ、曽祢まさこ先生の努力のお陰で、私は素晴らしい作品をたくさん読むことができました。本当にありがたいことだと思います。

 講談社のコミックス・ミステリーにて「呪い髪」「薔薇の柩」「惨劇の夜」「春を夢見て」に「蜜の部屋」を加えて、再刊されております。

・注1
 個人的に思い入れのある作品は「草原」です。
 私が小学生の頃、子供向けの怪奇小説本で「壁の中のアフリカ」というタイトルで載っておりまして、子供心に戦慄しました。
 内容も怖かったけど、あのおどろおどろしい挿絵がもう再凶!!
 いまだにありありと思い起こせます。(もう一度読みたいなあ…。)

・備考
 ゾッキ本(小口下部に赤いマジックで線引き)。紙スリップ付。

2016年5月22日 ページ作成・執筆
2019年3月20日 加筆訂正

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