流水凛子「黒のたそがれ」(1987年9月9日第1刷発行)

 収録作品

・「悪夢PART.1 黒のたそがれ」(「ホラーハウス」1986年3月号」)
「少女は毎晩、悪夢にうなされていた。
 夢の中で彼女は「すごく怖いもの」に追いかけられ、家中を逃げ回る。
 こんな夢を見るのは、神経質な父親のせいかもしれないと彼女は考える。
 彼女の父親は頭が固く、年下の部下を仕事ができないと絶えず叱責しっていた。
 その夜、少女は良い夢を見るよう願いながら、ベッドに入るのだが…」

・「悪夢PART.2 黒猫」(「ソリティア」1986年11月号」)
「操はペットの小鳥を愛する少女。
 以前、小鳥を殺されたことから、彼女は野良の黒猫を嫌っていた。
 しかも、黒猫が隣の空き地で子供を産んだと聞き、ますます気に入らない。
 ある日、その黒猫が小鳥を襲ったことに気付き、彼女は本を投げつける。
 本は黒猫の足に当たり、黒猫は道路に逃げるが、通りがかった車に轢かれる。
 だが、黒猫の死体は道路になかった。
 以来、操は猫の鳴き声に悩まされるようになる。
 更に、奇怪な幻覚に襲われるようになり、彼女は猫を殺した祟りだと思い始め…」

・「悪夢PART.3 黒のたそがれ」(「ルージュ」1986年9月号増刊」)
「日向総子は志望校に受からなかったどころか、滑り止めの高校に補欠合格したことに大きなコンプレックスを抱いていた。
 そのため、クラスになじめず、ただひたすら勉強のことだけを考える。
 ある日、彼女は黒板近くの入り口の隅に一人の女子生徒が立っていることに気付く。
 今は一学期なのに、その女子生徒は冬服で、奇妙なことに誰も彼女に関心を払わない。
 実は彼女は交通事故死した少女の幽霊で、総子の席が彼女の席であった。
 少女の幽霊は総子に友達になってくれるよう迫り、総子は両親に学校に行きたくないと訴えるのだが…」

・「悪夢PART.4 転校生」(「ホラーハウス」1987年2月号」)
「佐霧香夜子という少女が三宅鈴子のクラスに転入する。
 香夜子は鈴子の隣の席になるが、鈴子は香夜子に既視感を覚える。
 香夜子は鈴子の登下校する道の途中にある古ぼけた洋館に祖母とクロという名の黒猫と共に暮らしていた。
 ある日、歴史の授業で、鈴子と香夜子はレポートのために組む。
 レポートは難航し、週末、鈴子は香夜子の屋敷に泊まることとなる。
 外見は洋風なのに屋敷の中は和装で、鈴子は何回も来たことがあるような感覚に襲われる。
 また、香夜子の祖母は自分の部屋で寝たきりであった。
 祖母は猫嫌いで猫を殺したことがあるため、香夜子とは反りが合わず、香夜子は祖母が病気なことを喜んでいた。
 その夜、鈴子は香夜子と一緒に寝るが、奇怪な幻覚に悩まされる。
 佐霧香夜子の正体は…?」

・「梛PART.1 マリコ」(「ホラーハウス」1987年5〜7月号」)
「蔦野梛(つたの・なぎ)は一見、不良少女であったが、本当は高い霊能力を持っていた。
 彼女の学校ではこっくりさんが流行り、低級霊が集まっているため、居心地が悪くて仕方がない。
 その流行の中心にいるのが御園生マリコであった。
 しかし、マリコはこっくりさんの途中に一時意識を失い、数日、学校を休む。
 ある夜、「バー・シャクティ」からの帰り道、梛の前にマリコが現れる。
 マリコは何かの力に引っ張られ、ある日本屋敷の土塀に吸い込まれる直前、マリコの魂が梛に助けを求める。
 梛はその屋敷に入るも、多数の霊体に襲われ、気が付くと、屋敷の外に放りだされていた。
 この屋敷は今まで数々の霊能者の精神を引きずり込んできた場所らしいのだが…」

 現在もなお健筆を振るってらっしゃる流水凛子先生の「初のオムニバス単行本」(前袖より)です。
 内容はどれもきっちりしていて、才気を感じさせます。
 個人的ベストは「転校生」。
 ダークな雰囲気とバッド・トリップな描写はなかなかのものです。

2024年3月24・26日 ページ作成・執筆

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