池川伸治「蝶を刺す針」(230円/1968年頃)
「昭和35年(1960年)。
スリラー漫画の創作に意欲を燃やす新米漫画家、山本四郎(18歳)。
しかし、スリラーをどうやって描けばいいかわからず、悩んでいた時に、彼の周囲で怪現象が起きる。
彼の家の壁にはいつの間にか「ふくしゅう」の文字が書かれ、家の近くでは人魂が目撃される。
また、四郎自身も突如行方をくらますが、彼は恋人の新崎富士子と墓場で逢引をしていた。
富士子は四郎に、彼女の元の恋人で、自殺をした芳雄の幽霊が彼を狙っていると忠告する。
四郎は漫画のネタができたと大いに張り切るが、アシスタントの竹中や友人の宮本には富士子の姿が死体のように見える。
その夜、富士子の言葉に従い、四郎達は芳雄の幽霊を松明でもって撃退。
だが、翌日、富士子はすでに芳雄に呪い殺されており、四郎達の前に現れたのは幽霊だったことが明らかとなる。
憑り殺される前に、四郎は芳雄の悪霊と戦う決意を固めるのだが…」
正直なところ、イマイチな作品だと思います。
相変わらず、矛盾はちらほらありますが(注1)、それよりも、作中に強引に捩じ込まれる「スリラーは善か?悪か?」(注2)といった問答がテンポを崩している気がします。
また、ラストが安直なハッピーエンドなのも、釈然としないというか、鼻白むというか…。
ストーリー自体は悪くないと思うので、「自らが体験した怪現象を漫画化する漫画家」にストーリーの焦点を据えたら、それなりに面白いものになったのではないでしょうか?
あと、個人的には、池川伸治先生が主人公の新人漫画家に自身の若き頃を投影しているのが、味わい深く感じました。
真ん中に大きなハート・マークのあるシャツを常時着ている熱血漢でございます。(女性関係も複雑です。)
・注1
一番の問題は「幽霊は火が苦手」としておりながら、ラスト、ちっとも苦手でない点でしょう。
また、主人公の元・恋人、保子も立ち位置がビミョ〜で、ストーリーを散漫にしているように感じます。
・注2
作中で説かれている「怪談思想」とは「怪談は人々に道徳を説くもの」とのことです。
でも、「グロはいけない」そうな。
・備考
経年の痛み・汚れ等あるも、非貸本。
2017年11月12日 ページ作成・執筆