杉戸光史「怪談犬少女」(230円)

「東北地方のあるひなびた山村で、連続して起こる変死事件。
 傷口から判断すると、どうやら狼か野犬に襲われたものらしく、村人達は不安を隠せない。
 というのも、この村にはお犬様明神という神社があり、神社にはある由来が伝えられていた。
 昔、このあたりには一匹の白い大蛇が棲んでおり、村人達を困らせていたと言う。
 この地を統治していた犬神家の殿様は討手を次々と繰り出したが、白蛇の魔力の前に皆、返り討ちとなる。
 そこで、殿様は、大蛇を倒した者には、氏素性に関係なく、一人娘の鶴姫を嫁に取らせ、自分の世継ぎにするという御触れを出した。
 喜び勇んで、多くの男が大蛇に立ち向かったものの、ことごとく食い殺される始末。
 万策尽きた殿様は飼い犬のクロに嘆息交じりにその話をすると、クロは脱兎の如く駆け出し、山中から小さな白蛇をくわえて戻ってきて、以降、白い大蛇が村人達を悩ませることはなかった。
 困ったのは殿様で、一人娘を犬にやるわけにはいかず、何とかごまかそうとするが、鶴姫は約束は約束と、クロと共に裏山へ姿を消す。
 ところが、殿様は一人娘を取り戻そうと、討手を差し向け、クロを殺し、鶴姫を強制的に連れ戻した。
 以来、クロの祟りが犬神家の一族を襲うようになり、次々と怪異が勃発。
 恐れ戦いた犬神家では、お犬様明神の社を建てて、クロの霊を供養し、鎮めたのであった。
 そして、今、村人達はクロの祟りが復活したのではと恐慌を来たしていた。
 騒動の最中、海辺に見知らぬ少女が打ち上げられているのが発見される。
 山本麗子という名の少女は、嵐の夜、ボートで海に漕ぎ出し、遭難したらしい。
 また、この少女は、犬神家の末裔、犬神弥生と瓜二つであった。
 全くの他人のはずなのに、奇妙に共通点の多い二人…。
 そして、満月の夜、二人の秘密が明らかになる…」

 「満月の夜」そして「犬乙女」…どういう感じか大体想像つくでしょう。
 ただ、この作品は、ちょっと練り込み不足な感じがあって、残念です。
 ネタばれですが、祟りのため異形となりながらも、双子で「善」と「悪」に別れるというアイデアは面白いと思いました。

・備考
 ビニールカバー剥がし痕あり。カバー、補強のため、セロテープで縁取り。袖にテープ留めあり。ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。喫茶店のスタンプ、前後に計六個あり。pp44・45、何かが挟まって、汚れ・シミとなっている。

2016年11月16日 ページ作成・執筆

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