月宮よしと「蛇娘」(200円)
「承応(じょうおう)元年(1652年)、志摩の国、二見浦。
九月十日夜、御用商人、志摩屋藤兵エの邸が火事になる。
火の回りが早く、藤兵エの一人娘、糸竹が邸に取り残されてしまう。
藤兵エは、娘を助けた者に娘をやると男衆に言うが、火勢の強さに皆、二の足を踏む。
そこに、男やもめの甚九郎が名乗りを上げ、顔の右半分にひどい火傷を負いながら、糸竹を救い出す。
しかし、志摩屋藤兵エは先程の約束をあっさり撤回、糸竹も甚九郎に対して冷淡に振る舞う。
村人からも笑い者になった甚九郎は、一人娘の楓と共に、村を出る。
実は、甚九郎は、以前、行き倒れの盗人から、百両という大金をもらっていた。
その金で商売をして、志摩屋を見返すつもりであったが、途中、女性が首を吊ろうとするのに遭遇。
事情を聞くと、彼女はある商人の家内で、仕入れに使う金百両を盗まれてしまい、このままでは店は破産、そこで思い余って、死んで詫びようとしていたのであった。
甚九郎は、自分の金も元は悪銭と、女性に金を与え、立ち去る。
八年後、近江の国で、甚九郎は竿竹売りをして、生計を立てていた。
相変わらずの貧乏暮らしで、志摩屋を見返すどころの話でない。
また、年頃の娘となった楓は、領主に仕える侍、三八郎と相思相愛の仲であったが、甚九郎は自身の苦い経験から、身分違いの恋には断じて賛成できない。
といろいろあって、自嘲気味になっていた甚九郎は、行商の途中、蛇が蛙を飲み込もうとしているのを目にする。
彼が蛇に蛙を逃がしたら、自分の娘をやろうと言うと、蛇は蛙を放し、甚九郎は苦笑しながら、その場を去る。
その後、立ち寄った町で、甚九郎は、以前金を与えた商人の家内と再会する。
彼女に頼まれ、彼が、商人の家を訪ねると、糸竹がその家の息子に嫁いでいた。
志摩屋は火事の後、没落し、藤兵エは病死、不憫に思った商人夫婦が倅の嫁に貰ったのである。
八年ぶりの再会であったが、糸竹は甚九郎を見るなり「わが家の家宝を盗んだ不心得者」と罵る。
甚九郎が村を去るのと時を同じくして、志摩屋から家宝の絵がなくなったのだと言う。
甚九郎は否定するが、糸竹はあくまでも彼を盗人呼ばわりし、文句があれば、絵を盗んだ犯人を捕らえてみろと強圧的。
二度も糸竹に罵られ、失意の甚九郎が帰宅すると、腹に蛇が巻き付いた状態で、楓が苦悶していた。
甚九郎はどうにかして蛇を娘から引き離そうとするが、終いには蛇の執念深さに音を上げてしまう。
蛇は単に楓の腹に巻き付いているだけであり、共に過ごしているうちに、楓は蛇に馴れ、愛着を覚えるようになる。
半月後、ある古物商で、甚九郎は志摩屋から盗まれた絵を見かける。
だが、その絵は百両という値がつき、今の甚九郎ではとても手が出ない。
父親の苦悩を見かねて、楓は見世物小屋に身を売り、百両を甚九郎のもとに残す。
楓は「蛇娘」として披露され、見世物小屋は大繁盛。
一方、甚九郎は古物商で絵を買い、糸竹のもとに絵を持って行くのだが…」
「蛇娘」ではありますが、楳図かずお先生でお馴染みの「蛇が憑りついた娘」では全然なく、「蛇が腹に巻き付いているだけの娘」です。
まあ、最終的には、蛇にすっかり慣れ親しんで、身体中蛇を巻き付かせて、自在に蛇を使えるようになったようなので、それはそれで凄いかも。
でも、蛇を使って、人を襲うとは一切ないので、内容はタイトル負けしているように思います。
恐らく、原作があるのでしょうが、今のところ、確認が取れておりません。
個人的に見どころと思うのは、蛇が腹に巻き付いて、楓が苦しむシーン。
月宮よしと先生の女性キャラの特徴、三白眼が炸裂しており、やけに説得力があります。
新手のダイエットに、女性の皆様、如何でしょうか?
・備考
カバーの袖にセロテープの痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の貼り付けあり。
2017年8月25日 ページ作成・執筆