池川伸治「白娘」(220円)



 収録作品

・「白娘」
「死というものに思いを巡らせる少女、博子。
 ある日、彼女はゴン太という男に、死に興味があるなら、0丁目の古川邸を訪ねるよう告げられる。
 古川邸はこの辺りでは有名な金持ちの屋敷であった。
 友人の佐代子と共に、博子は古川邸を訪問すると、四郎という名のハンサムな青年が彼女達を応対する。
 彼のどこか陰のある魅力に惹かれ、博子達は何度も古川邸に行き、楽しく過ごす。
 ただ、彼の両親は何かの病気らしく、ほとんどその姿を現さない。
 博子が古川邸に遊びに行くようになってから、博子は身体のだるさを感じるようになる。
 そして、ある日、佐代子が心身ともに衰弱した状態で、ダウン。
 博子の母は、博子に、古川邸に出入りした人達は皆、変死を遂げていると話す。
 また、友人のトン子からは、古川邸は区役所の記録では誰も住んでないと知らされる。
 真相を確かめるために、博子は古川邸を訪ねると、四郎は彼女に自分達には近づかないように言う。
 そして、彼は「死」というものについて語り始めるが、話の途中、博子が誤って川に転落。
 博子を助けた四郎の身体には、幾つもの傷痕が残っていた。
 四郎とその一族の秘密とは…?」
 池川伸治先生の遺した傑作の一つに数えられるでしょう。
 「死ねない一族」をテーマにしており、萩尾望都先生の「ポーの一族」の先駆との評価も(極一部で)あります。(ですが、私、「ポーの一族」を未読です…。)
 この作品で面白いのは、死なないものの、肉体の劣化は食い止められず、辛うじて身体を保つために、人間の「精気」を必要とする、という設定です。  また、身体の一部が取れてしまっても、生気を持っており、この一族の人間はあちらこちらで身体の一部を落っことしているのも、ユーモラスでありながらも、不気味。
 バラバラになった手足の群れが生者に襲いかかる描写は本作のハイライトで、とってもイマジネーティブであります。(チューチュー精気を吸っているのは、ご愛敬。)
 ちなみに、ピクピク動く指の描写から、星新一先生の「死なない人間」を扱った、ホラー・ショート・ショート「骨」の影響があったのではないか、と考えております。
 まあ、詳しく裏付けを取っておりませんので、推測の域を出ないのでありますが…。

・「愛」
「子供達に罵声と共に石を投げつけられても、通りすがりの百姓に肥(こえ)をぶっかけられても、ただ黙々と、石を抱いて、目的地へ向かう男性。
 彼の真意とは…?」
 唐沢俊一氏・監修「まんがの逆襲」(福武書店)にて復刻されております。

・備考
 カバー背表紙に痛み、裏に鉛筆にて書き込みあり。冒頭、綴じが外れている。本文、幾カ所か鉛筆で語句の訂正。前後の遊び紙、セロハンテープの痕あり。後ろの遊び紙に鉛筆にて書き込みあり。

2017年4月3日 ページ作成・執筆

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