沼田清「地球・二つの物語」(220円/1963年頃?)
「197X年、二月下旬。
雨の夜、日東芸大彫刻科四回生、一谷健吾は不思議な美女と出会う。
彼女は彼にテレパシーを使って話しかけ、彼のことを尋ねる。
彼の方も、卒業制作のモデルになるよう、彼女に頼み、翌日、会う約束をする。
しかし、次の日、彼が外出すると、町の人々の様子がおかしい。
クラスメート達に出会うが、彼らは彼に無理矢理、水を飲ませようとし、水鉄砲で襲いかかってくる。
大勢の人々に追われ、彼が窮地に陥った時、彼は、美女との待ち合わせ場所にテレポートする。
そこで、彼女は健吾に、東京が今、ウォーダ星人によって侵略されつつあることを明かす。
ウォーダ星人は水分子に姿を変えることができ、摂取した人間の脳を奪う。
だが、健吾の血液型は非常に稀な「RHヌル型」で、ウォーダ星人の洗脳を逃れたのであった。
次に、彼女は自分の身の上について語る。
彼女の名はビーナス、そして、M87星雲クロス7という星から来た改造人間であった。
約5600年前、彼女は、地球に人類による文明が芽生え始めた頃に、調査隊員としてやって来る。
当時、ムー大陸で人類は驚異的な進歩を遂げていたが、天変地異により崩壊。
わずかな生き残りを救助すべく、ビーナスとエウスは地球に残ったのである。
ウォーダ星人により地球が危機に瀕している今、健吾は、ビーナスとエウスと共に戦う決意をする。
そして、健吾自身もサイボーグへと改造し、敵の本拠地を破壊すべく、昭和湖底に向かう…」
怪奇色は若干、あるものの、基本、SFです。
「エスパー」やら「サイボーグ」、「インベーダー」等が扱われ、石森章太郎先生を彷彿させる内容です。
後書きから推測すると、1963年頃に描かれたらしく、石森先生の影響があったかどうかは不明です。(詳しい方がおられましたら、ご教示お願いいたします。)
とは言え、細かい部分までSF的要素を盛り込んでおり、沼田先生にはかなりのSFに関する知識があった模様です。
今となってはベタな内容ですが、埋もれてしまった佳作と言えるのではないでしょうか?
・備考
ビニールカバー貼り付け。全体的に湿気で歪み。糸綴じあり。見返しのノドに紙テープで補強。後ろの遊び紙に紙の貼り付けあり。
2020年10月26日 ページ作成・執筆