杉戸光史「怪談天女の沼」(220円)
「犬神勇治(18歳)は、母の死後、独りで東京に暮らしていたところ、新聞広告から名門犬神家の血を受け継ぐ者と知る。
彼はそんなことは全く知らなかったが、十六年前、母親は幼い彼を連れて、東京へ出たらしい。
彼は、分家の春江おばに連れられて、鬼首(おにこうべ)村へと来る。
鬼首村は岡山県と兵庫県の県境にあり、四方を山に囲まれた、盆地の集落であった。
村に着いた早々、村人達から村に入らせないよう妨害を受ける。
村人達の言葉から、彼の父親は狂人で、過去、村で何か恐ろしいことが起きたらしい。
更に、彼が東京にいた時も、村には行かないよう警告する手紙が来ていた。
気になりつつも、彼は、犬神家のお邸を訪れる。
犬神家は、小竹と小梅の二人の老婆が実権を握っており、二人は勇治を歓迎してくれる。
勇治は、腹違いの兄、勇一郎とも会うが、彼は病気で、先の長くない身あった。
彼は勇治に、長生きして、どんな事があっても他人に財産を渡すなと言う。
その直後、勇一郎は薬が毒にすり替えられていて、死亡。
混乱の最中、勇治は、塀の上から、こちらの様子を窺う、白装束で長い黒髪の娘を目にする。
その娘は、彼が村を訪れた時にも見かけていた。
その夜、夜中にふと目覚めた勇治は、二人の老婆がどこかへ出かけようとするのを知る。
二人は物置で、姿を消し、勇治が捜すと、長持ちが地下への入り口になっていた。
階段を降りると、そこは鍾乳洞で、老婆の行方は見失うが、黒髪の娘がいた。
その後をつけると、沼の近くに出て、そこには天女明神のお社があった。
しかも、その天女像は、あの長い黒髪の娘と瓜二つであった。
天女明神に伝わる、不思議かつ、もの悲しい逸話とは…。
そして、謎の渦巻く中、再び殺人事件が起きる…」
「怪談天女の沼」は前編で、「怪談鬼火天女」が後編となります。
ズッコケなオープニングに、サービス精神が窺えて、微笑ましいです。
・備考
カバー欠。表紙に青ペンでの落書き。後ろの見開きに貸出票の剥がし痕と書き込みあり。
2020年9月29・30日 ページ作成・執筆