池川伸治「おしらさま」(220円/1967年11月5日完成)
「ある秋の日、学校からの帰宅途中、伊藤マリ子は河原で見知らぬ青年から石を預けられる。
青年は涙を流して、この石を彼の心と思い、一年後の今日まで持つ続けるよう、マリ子に懇願する。
だが、この石を巡り、彼女の身の周りでは様々なことが起きるようになる。
マリ子の母は石を捨てるよう彼女に強要。
また、大金持ちの息子、大石幸太郎に、何でも好きなものと引き換えに、石を譲るよう頼まれる。
マリ子は、青年との約束を守るために、石を密かに庭の石燈籠の下に埋める。
だが、目付きの悪い少女から「美しい石」を渡されたことから状況が深刻化。
「美しい石」はマリ子の持っている石から守るためという名目であったが、実は罠であった。
何故か、この「美しい石」を身近に携えておかないと、マリ子の顔は醜く変貌するようになる。
目付きの悪い少女はマリ子から「美しい石」を取り上げ、青年から預かった石と交換するよう脅迫する。
マリ子はこの脅迫をはねつけ、醜い姿のまま、生活する。
その間に、彼女は友情や恋、家族の愛を失ってしまうが、青年の涙を思うと、石を捨てる気には決してなれない。
季節は巡り、青年との約束の日が近づいてくる…」
「怪奇」というよりは「不思議」な作品です。
一種の寓話なのかな…と読み進めていたら、ラストで「銭ゲバ」な展開を見せ、ちと興ざめ。
ハッピー・エンドではありますが、ラストの台詞「美しい心とお金があって、はじめて幸せになれるんです!」に引っかかるものを感じました。
要するに、私達は「幸せ」にはなれないってことなんですね!!(少なくとも、私は両方、持ち合わせてはおりません。)
あと、個人的に、気になったのは、巻末の「一言」コーナー。
ゲストと池川伸治先生の対話なのですが、ゲストの鋭い突っ込みへの、池川伸治先生の回答が意味不明かつテキト〜で、やはり、池川伸治先生は池川伸治先生以外の何者でもないのでありました。
・備考
カバー痛み、汚れ。背表紙、色褪せ。糸綴じあり。前の遊び紙、下隅が欠損。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2018年3月14日 ページ作成・執筆