杉戸光史「怪談紅蜥蜴」(230円)

「占い師の館で、栄子は、水晶玉の中に紅トカゲを見る。
 紅トカゲは口から黒い液体を吐き、液体は「復讐」の文字を形作る。
 栄子が帰宅すると、家の様子を外から窺う、怪しい男の姿があった。
 父親に、怪しい男と、「紅トカゲ」の話をすると、父親は顔色を変え、明らかに挙動不審。
 その夜、栄子が何者かの気配に目を覚ますと、立ち入り禁止の「あかずの間」の扉が開いていた。
 中を覗くと、婆やが倒れており、先程の怪しい男が「黒塗りの箱」を持ち出そうとしていた。
 その時、甲冑に身を隠していた父親が、男の片腕を刀で切り落とす。
 父親は男を斬殺しようとするが、懐にとび込んだ男に首を噛まれてしまう。
 男は仲間と共に逃走し、父親は追おうとするものの、気絶してしまう。
 後日、男の片腕が医者に鑑定により、細胞がトカゲと同じものであることが判明。
 また、父親を侵したのもトカゲの毒で、医者はその旨を家族に話すが、全く信じてもらえない。
 だが、父親には異変が起こりつつあった。
 家族がひた隠しにする「黒塗りの箱」の中身とは…?」

 杉戸光史先生らしい出来映えです。
 言い換えると、ビミョ〜な出来です。
 (以下、ネタバレ)「トカゲ族」まではわかりますが、彼らの崇める神像が「霊液を口から流す、トカゲの像」というのが、実にへっぽこ。
 そして、トカゲ族からヒロインを救い出そうとする際も、「は虫類はショックを与えると一時催眠状態におちいる」から、家に火を付けるという、よくわからない展開。
 勿論、ラストは安易に夢オチで決めてくれます。
 んにしても、杉戸光史先生のマンガを読むと、如何にして予定調和の枠内に収めるか、汲々としている様子が伝わってきます。
 ただし、それが面白さにつながるかと言うと、そうとは限らないのが、現実のつらいところ。
 だったら、そんなものはなから無視して、池川伸治先生や好美のぼる先生の如く、好き放題にやったら、作品にプレミアが付いたかもしれないのにね。(プレミアが付いていれば、素晴らしい作品とは限りませんが…。)

・備考
 カバー痛み、背表紙色褪せ。前の遊び紙、欠損。p93、p102、鉛筆で落書き。後ろの遊び紙に数字の書き込みと貸本店の紙、貼り付け。裏側の表紙、カバーと共に折れ。

2018年7月28・29日 ページ作成・執筆
 

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